1 交通事故での眼鏡の取り扱い
交通事故で、医師が視力を補完するために必要と認めた眼鏡やコンタクトレンズが壊れた場合には、物損ではなく人身傷害として損害賠償を受けることが出来ます。
眼鏡やコンタクトレンズについての損害は、物損のようにも思えますが、人の身体の一部の機能を代行しており、身体一部として身体に密着して使用されているので、人身損害に含まれることがあります。
2 人身損害となるメリット
任意保険会社が対応しているときには、名目が違っても賠償金を受け取ることができればよいので、人身損害と物損を区別することはあまり重要ではないかもしれません。
しかし、相手が任意保険に入っていなかったり、被害者の過失が大きかったりなど、一定の場合に自賠責保険に請求することがあり、その際には物損との区別が重要となることがあります。
交通事故に伴う傷害で医師が認めた視力矯正のための眼鏡やコンタクトレンズが壊れた場合には、自賠責保険に対して請求できることがあるのです。
例えば、医師が身体の機能を補完するために必要と認めた眼鏡が、交通事故の傷害に伴い、修理または再調達が必要になった場合、修理費用または再調達に必要な実費の支払いが認めらることがあり、原則としていずれか安い方を自賠責保険に請求することになります。
ただし、自賠責保険上の眼鏡やコンタクトレンズに関する修理又は再調達費用は、5万円を限度としているので注意が必要です。
3 自賠責保険で人身損害として認められているその他のもの
自賠責保険では、眼鏡やコンタクトレンズの他にも、義肢や義眼、補聴器、松葉杖なども、自賠責保険で補償の対象となる可能性があるものとして規定されています。
これらの物品についても必要性がある場合には、修理費用または再調達に必要な実費が認められます。
4 再調達に必要な費用
前述のとおり、眼鏡や補聴器等の事故による破損の場合には、修理費用または再調達に必要な実費が自賠責保険から支払われる可能性があります。
例えば、医師が必要と判断して被害者の聴力を補完するために着けて補聴器が、交通事故に伴う衝撃で壊れて修理不能になり、再調達が必要になった場合には、再調達に必要な実費の全額が支払われることがあるのです。
つまり、古い眼鏡や補聴器が事故で壊れた場合に、中古品として減価償却されることなく、新しく眼鏡や補聴器を作り直した費用の全額が、損害として認められることがあるのです。
物損の場合には、修理費用かその物の時価(事故時の中古品としての市場価値)のいずれか低い方が賠償されますので、通常は新しく購入した費用の全額が補償されることはありません。例えば、視力矯正や眼の保護の必要もないのに、純粋におしゃれのためだけにかけていたサングラスが壊れて朱里出来ない場合には、中古品としての価格のみが賠償されます。
しかし、医師が必要と判断した眼鏡や補聴器等の場合には、修理できないときには同等の眼鏡や補聴器を調達するために必要となった実費として、新しいものに買い替えた費用の全額が支払われる可能性があるのです。
5 弁護士にご相談ください
交通事故で請求できるものは様々で、人身損害として請求できるかや何を根拠にどのように請求するのかで、金額が変わってくることがあります。また、被害者が請求できると知らなかったり、請求するのを忘れたまま示談をして請求できなくなったりすることもあります。
交通事故にあった際には、なるべく早く弁護士にご相談ください。