障害者の逸失利益

1 障害者と逸失利益

 令和7年1月20日、大阪高等裁判所先天性の聴覚障害がある女児の逸失利益について、基礎収入の減額を認めない旨の判決があり、その後、判決は確定しました。

 後遺障害逸失利益の算定基準となる基礎収入は、障害のない未就労の女性の場合、一般的には賃金センサスの全労働者平均賃金を基礎にして計算されます。

 確かに、未就労の年少者の収入については将来の予測が難しいですが、障害の存在や程度は、基礎収入の減額を検討するに当たって考慮すべき事実となります。障害のない状態から障害のある状態になれば通常は収入が減少しますので、障害の存在により収入が減少するとも考えられます。障害の具体的な状況によっては、年少者がどれだけ訓練等をしたとしても同じだけの収入を得ることは不可能と言えることもあるでしょう。

 この点、大阪高等裁判所の前に判断をした大阪地方裁判所は、交通事故で死亡した聴覚障害のある児童の逸失利益を全労働者の平均賃金から一定額を減額した判断をしました。大阪地方裁判所は、基礎収入を平均賃金の85%として障害を理由に平均賃金から減額する判決を行ったのです。この判断は、実務においてはよく主張されているものでした。

 では、大阪高等裁判所はどのような判断をしたのでしょうか。

2 高等裁判所の判断

 今回、大阪高等裁判所は、法の整備や技術の進歩等から聴覚障害者の平均収入が上昇することを予測し、学習やコミュニケーションに関する被害者の能力や意欲により影響を小さくすることができたという事実から、被害者の聴覚に関して、基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力の制限があるとはいえない状態にあるものと評価しました。

 今回の判例は被害者の個別の事情も総合的に考慮されているため、すべての聴覚障害者等に単純に当てはまるものではありませんが、障害により一律に基礎収入を減額するような不平等な取り扱いを否定したものとも言えます。

 障害があるだけで基礎収入を当然に減額するのでなく、証拠資料に基づき、経験則と良識を活用して、できる限り蓋然性のある額を算出するために丁寧に一つ一つの事実を検討して総合的に判断した結果、障害は基礎収入を減額するべき程度にないものと評価されました。

 障害がある場合に労働能力の制限がある状態かの判断基準については、判例の蓄積が待たれますが、今後、逸失利益については、より慎重な判断や交渉が必要となります。

 逸失利益についてお悩みの方は、弁護士などの専門家にきちんとご相談ください。

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交通事故の当事者尋問の流れ

1 当事者尋問

 訴訟が進行して書面での主張・立証がある程度進んだ後、和解ができない時には、当事者の申立または裁判所の職権で当事者尋問を行い、証言を証拠資料とすることがあります。

 当事者尋問は、原告や被告、被告が法人の場合の代表者など、訴訟の当事者に対する尋問です。第三者の場合には証人尋問になります。

 交通事故の場合には、事故時の状況を一番知っているのは当事者です。また、ケガをした際は、身体の状況を一番知っているは当事者です。

 訴訟において、事故状況や過失割合、ケガによる身体の支障などが問題となっている場合には、当事者尋問の際の当事者の証言が重要な証拠とされることがあり、当事者が裁判所で直接証言をすることになります。

2 当事者尋問前の準備

 当事者尋問を行う際には、まずは、申請する側が前もって陳述書を作成して提出し、証拠申出書と尋問事項書を提出します。陳述書で、あらかじめ当事者尋問で証言する具体的な内容を明らかにし、主尋問では陳述書に沿って質問と回答をします。

 陳述書と違う回答をしてしまうと、真実かどうかを疑われてしまいます。通常は、事故から訴訟までにかなりの時間が経過していますので、よく思い出しながら記憶のとおりの書面を慎重に作成し、尋問当日もその記憶に基づき証言することになります。

 尋問事項書では、尋問の当事者、尋問予定時間、証明しようとしている事実、尋問事項などを明らかにし、裁判所が採用するかどうかを決定します。

3 尋問前の手続

 当事者尋問は、裁判所が開廷している時間に行われますので、平日の日中の裁判所の改定時間内に公開の法廷で行われます。

 当事者尋問の当日は、通常は、当事者は代理人の弁護士と一緒に法廷に行き、証人等出頭カードに署名押印をします。あらかじめ宣誓書に署名押印をしておいたり、この際に身分証明書の提示を求められて本人確認をされることもあります。尋問が始まるまでは、傍聴席か原告代理人の隣に座って待っていただくことが多いです。

 当事者尋問の際には、まずは、申請をした側の主尋問が行われますが、当事者が移動する際には裁判官から指示がありますので、基本的にはその指示に従ってください。

 まず、当事者が、裁判官に証言台に移動するよう指示されて移動し、裁判官から、話をする際には裁判官の方を向いて話すなどの注意事項の話がありますので、注意事項に従ってください。

 尋問の際には、質問をする代理人は証言台の横から質問することになります、証言台では裁判官やマイクのある正面を向いて回答をしなければなりません。慣れていないと少しおかしく感じるかもしれませんが、回答の際には常に裁判官のいる正面に向かって回答してください。

 次に、当事者が人違いでなく本人であるかを確認する人定質問を行います。氏名や住所、生年月日を答えるだけですが、引っ越したばかりで住所を多少間違えても、大きな間違いがなければ大丈夫です。

 その後、宣誓書を手にもって声を出して宣誓書を読み上げます。宣誓後、裁判官からは、記憶と異なることをわざと証言すると、過料の制裁がある可能性があることなどを注意されます。

4 主尋問

 主尋問では、通常は、陳述書の流れに沿ってなるべく当事者自身が口頭で準備書面や陳述書で主張していた内容の裏付けとなるように、背景なども説明しながら内容を説得的に回答していきます。尋問の時間は、内容にもよりますが、交通事故の場合には、当事者1名につき30分から1時間くらいの場合が多く、時系列に沿って1問1答の形で回答していくことが多いでしょう。

 質問は、当事者が弁護士を依頼しているときは弁護士が行い、弁護士を依頼していない時は、裁判官が代わりに行います。回答の際には、自分の記憶のみで回答をしなければならず、書面などを持ち込むことはできないので注意が必要です。思い出しながらゆっくり回答をすると、当事者が思っているよりも時間がかかりますので、ご注意ください。

 また、主尋問では、原則として誘導尋問が禁止されていますので抽象的な質問しかできず、緊張とも相まって質問の意図が分からなくなることもあります。弁護士が質問を言い換えて対応しますが、質問により何について回答するのかをきちんと打ち合わせておく必要があります。

5 反対尋問

 主尋問の後、相手側が反対尋問を行います。反対尋問は、申請者側のこれまでの主張や主尋問の内容と矛盾する点や不自然な点を浮かび上がらせるための質問です。

 反対尋問では、誘導尋問が許されていますので、具体的な質問がされることもあります。

 いくつかの質問に「はい」と答えているうちに、前の回答や主尋問の回答と矛盾が生じたりズレたりすることがありますので、よく考えて正確に答えなければなりません。

 反対尋問で申請者側の主張が疑わしいものであると裁判官に判断されてしまうと、判決の結論が変わることもある重要なものです。反対尋問は主尋問と同じくらいの時間か、少し短いくらいになることが多いでしょう。

6 再主尋問、再反対尋問

 場合によっては、その後に当事者側から再主尋問や再反対尋問が行われることもあります。

 再主尋問は、反対尋問で当事者がうまく答えられなかったり回答が適切でなかったと思われる質問について、改めて証人の答えやすい方法で質問をし直したり確認するものです。再主尋問は、反対尋問をフォローするものになります。

 その後、相手側が再度反対尋問を求め、裁判官が特に認めた場合には再反対尋問が行われます。再反対尋問は、行われないことも多いです。

7 補充尋問

 主尋問と反対尋問が行われた後、裁判官が必要に応じて補充尋問を行います。裁判官の質問は重要な点の確認が多く、裁判官が特に確認しておきたい事項がある場合に行われます。補充尋問の回答により結論が左右されることもありますので、よく思い出して回答しなければなりません。

8 尋問終了後

 尋問が終わったら、裁判官から元の席に戻るように指示がありますので、元の席に戻って他の方の尋問などが訴訟が終わるまでお待ちください。

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自動車の停止距離

こんにちは。弁護士法人心京都法律事務所の弁護士の伊藤です。

1 自動車の停止距離

 自動車を運転していている際に、停止しようとしてブレーキを踏んでも、すぐに止まることはできません。

 一般的には、運転者が危険を感じてから実際に停止するまでに、①危険と判断してブレーキをかけようと思考する、②右足をブレーキに移動してアクセルペダルからブレーキペダルに移動させる、③ブレーキペダルを踏みこんでブレーキをかける、④ブレーキが利き始める、⑤自動車が停止する、という過程を経る必要があります。

 各過程の間にも自動車は前に進んでいますので、危険を感じてから停止するまでのことを考慮すると、車の安全に運転するためには、十分な車間距離が必要になります。

2 停止距離の計算方法

 自動車の停止距離は、①~④の空走距離と④~⑤の制動距離を足した距離です。

 なお、空走距離は、反応時間(秒)×車の速度(m/秒)に、制動距離は、車の速度(時速/km)の2乗÷(254×摩擦係数)になります。

 例えば、乾燥したアスファルト舗装道路での時速50キロでの停止距離は、約24.48mに、時速80キロでの停止距離は、約52.66mに、なります。

 もちろん、停止距離は、運転者の能力や体調など運転者の状態、路面の種類や状態、タイヤの種類や状態、自動車の重さや性能などにも左右されます。

 例えば、運転者が疲れていたり眠気があったりすれば、反応時間が長くなり空走距離が伸びて、停止距離が長くなります。また、路面が凍結していたり、雨が降っていてハイドロプレーニング現象がおきると、自動車を停止させること自体が困難になったりすることがあります。タイヤがすり減って溝がなくなっていれば滑って停止しにくくなります。

3 年末には特に事故にご注意ください

 年末になり、自動車を運転する際に寒さや雪で路面の状態が悪かったり、運転手が疲れていたり急いでいたりすることが多くなっています。

 自動車を運転する際には、環境や速度に応じて十分な車間距離を保ちながら慎重に運転をしてください。

 また、疲労や眠気がある状態で運転すると、事故の危険や重大な事故になる可能性が高まります。自動車を運転する際には、余裕をもって予定時間より早めに行動し、こまめに休息をとるなど、無理をせずに、安全運転を心がけてください。

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交通事故でメガネやコンタクトレンズが壊れた時

1 交通事故での眼鏡の取り扱い

 交通事故で、医師が視力を補完するために必要と認めた眼鏡やコンタクトレンズが壊れた場合には、物損ではなく人身傷害として損害賠償を受けることが出来ます。

 眼鏡やコンタクトレンズについての損害は、物損のようにも思えますが、人の身体の一部の機能を代行しており、身体一部として身体に密着して使用されているので、人身損害に含まれることがあります。

2 人身損害となるメリット

 任意保険会社が対応しているときには、名目が違っても賠償金を受け取ることができればよいので、人身損害と物損を区別することはあまり重要ではないかもしれません。

 しかし、相手が任意保険に入っていなかったり、被害者の過失が大きかったりなど、一定の場合に自賠責保険に請求することがあり、その際には物損との区別が重要となることがあります。

 交通事故に伴う傷害で医師が認めた視力矯正のための眼鏡やコンタクトレンズが壊れた場合には、自賠責保険に対して請求できることがあるのです。

 例えば、医師が身体の機能を補完するために必要と認めた眼鏡が、交通事故の傷害に伴い、修理または再調達が必要になった場合、修理費用または再調達に必要な実費の支払いが認められることがあり、原則としていずれか安い方を自賠責保険に請求することになります。

 ただし、自賠責保険上の眼鏡やコンタクトレンズに関する修理又は再調達費用は、5万円を限度としているので注意が必要です。

3 自賠責保険で人身損害として認められているその他のもの

 自賠責保険では、眼鏡やコンタクトレンズの他にも、義肢や義眼、補聴器、松葉杖なども、自賠責保険で補償の対象となる可能性があるものとして規定されています。

 これらの物品についても必要性がある場合には、修理費用または再調達に必要な実費が認められます。

4 再調達に必要な費用

 前述のとおり、眼鏡や補聴器等の事故による破損の場合には、修理費用または再調達に必要な実費が自賠責保険から支払われる可能性があります。

 例えば、医師が必要と判断して被害者の聴力を補完するために着けて補聴器が、交通事故に伴う衝撃で壊れて修理不能になり、再調達が必要になった場合には、再調達に必要な実費の全額が支払われることがあるのです。

 つまり、古い眼鏡や補聴器が事故で壊れた場合に、中古品として減価償却されることなく、新しく眼鏡や補聴器を作り直した費用の全額が、損害として認められることがあるのです。

 物損の場合には、修理費用かその物の時価(事故時の中古品としての市場価値)のいずれか低い方が賠償されますので、通常は新しく購入した費用の全額が補償されることはありません。例えば、視力矯正や眼の保護の必要もないのに、純粋におしゃれのためだけにかけていたサングラスが壊れて修理出来ない場合には、中古品としての価格のみが賠償されます。

 しかし、医師が必要と判断した眼鏡や補聴器等の場合には、修理できないときには同等の眼鏡や補聴器を調達するために必要となった実費として、新しいものに買い替えた費用の全額が支払われる可能性があるのです。

5 弁護士にご相談ください

 交通事故で請求できるものは様々で、人身損害として請求できるかや何を根拠にどのように請求するのかで、金額が変わってくることがあります。また、被害者が請求できると知らなかったり、請求するのを忘れたまま示談をして請求できなくなったりすることもあります。

 交通事故にあった際には、なるべく早く弁護士にご相談ください。

 

 

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同乗者と被害者側の過失

1 過失相殺

 民法722条2項は、「被害者に過失があったときには、裁判所はこれを考慮して損害賠償の額を定めることができる」と規定しており、これが損害賠償の際に過失相殺がされる根拠となっています。

 そして、民法722条2項の過失には、単に被害者本人の過失だけでなく、広く被害側の過失をも含む趣旨と解するのが相当である旨の判例があり、被害者と一定の関係がある場合には「被害者側の過失」として過失相殺されるとされています。

 例えば、親が運転している車両に乗っていて、親がが他の車と交通事故を起こした場合、同乗していた幼児の損害賠償の際には、親の過失が考慮されるのです。

 もちろん、単に同乗していただけでは、通常、同乗者は第三者として通常は過失相殺されません。

 では、どの程度の関係があれば被害者側の過失として過失相殺の対象となるのでしょうか。

2 被害者側の過失の考え方

 被害者側の過失は、「被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者」(最判昭和42年6月27日判決)といえるかどうかで判断されており、直接の加害者との公平上、経済的にも被害者と一体をなす実態が必要とされています。大まかにいうと、被害者と財布が一つと言えるような関係にある場合には、被害者側の過失として過失相殺をしてもよいと判断されているのです。

 例えば、双方に過失がある事故で親の車に同乗していた幼児がケガをした場合、本来は親にも子どもに過失分の損害を賠償する責任があります。共同不法行為ですので、加害者双方に全額を賠償する義務がありますが、全額を賠償した者は、他の共同不法行為者に自分の過失分を超えた賠償金の求償ができるようになるのです。

 そこで、加害者が他の加害者と共に損害発生に寄与している場合において、加害者が被害者との関係では全損害額を負担した後に共同不法行為者に対して求償をするよりも、被害者側の過失としてあらかじめ過失相殺して支払うなど内部関係として処理する方が公平かつ合理的です。

 つまり、加害者が、一旦被害者に損害を全額支払いした後に親に求償し、親が子どもの受け取った損害賠償額から求償された金額を支払うよりは、最初から親の責任分を控除して子どもに支払うほうが、先に支払った加害者が親からの求償金を受け取れないリスクもなくなり、公平かつ簡便なのです。

 「被害者側の過失」とは、損害の公平な分担という見地から認められる紛争の一回的解決のための手段なのです。裁判例上は、「被害者側の過失」は、家計を同一にする夫婦・親子間の関係が第一義的に想定されていますが、内縁の夫婦などこれに準じるような関係の場合には、同乗者であっても過失相殺される可能性があります。また、夫婦であっても、婚姻関係が破綻しているような場合には、過失相殺が認められない可能性もあります。

 3 その他の同乗者の過失相殺

 保険会社から、家計が全く別の他人である同乗者について、好意同乗の際などの際に無償で同乗していたから賠償金を減額すると主張することもあります。裁判例上、明確に被害者側の過失が否定されているケースであっても、保険会社側が「被害者側の過失が成立する」と主張するケースがあり、保険会社が様々な理由で過失相殺を主張して損害賠償額を減額しようとすることがあります。

 第三者である同乗者に過失相殺がされるのは、同乗者自身が事故発生に寄与している場合や、同乗者自身が事故の損害拡大に寄与していた場合、同乗者の車を他人に運転させて事故を起こした場合など、限られた場合のみです。

 例えば、飲酒、無免許運転、疲労困憊などの危険が発生する事情を知っていて運転を止めなかった場合、運転中に運転者を驚かせたり、速度違反や信号無視などの交通違反をするように囃し立てたりして安全運転を妨害して事故の原因を作ったり事故に関与していた場合、同乗者自身がシートベルトをしていないことでケガが酷くなった場合、同乗者が自分の車を一時的に他人に運転させていて運行供用者といえる場合などは、過失相殺の可能性があります。

4 同乗者のご相談

 同乗者に被害者側の過失として過失相殺をされるかどうかは非常に複雑です。

 また、本来は過失相殺が認められないような場合でも、保険会社側から過失相殺を主張されることもあります。

 交通事故の同乗者がケガをされた場合には、お早めに専門家である弁護士にご相談ください。

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自賠責保険に入るタイミング

1 自賠責保険と車検

 自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は、自動車損害賠償保障法に基づいて、自動車(バイクや原付を含みます)の所有者が加入しなければならない強制保険です。自賠責保険に入っていない自動車を運転すると、懲役や罰金などの刑事処分を受けたり、免許の違反点数が加算されて免許停止などの行政処分を受けることになります。

 車検が切れたり、自賠責保険に入っていない自動車を運転することは絶対にやめてください。

2 自賠責保険の有効期限

 自賠責保険に加入していないと車検が受けられないため、通常は車検の際に自賠責保険も更新するようになっています。

 自賠責保険と車検は、満了時刻が異なるため、有効期限の関係で自賠責保険の期間は車検の有効期限より少し長めに設定されているのが一般的です。

 万一、何らかの理由で車検が遅れるなどしても、車検切れになってすぐに自賠責保険が使用できないというわけではありません。

 しかし、車検切れの自動車は、公道上を安全に走行する性能があるかどうか検査を受けていない自動車ですし、自賠責保険に入っていない自動車は、交通事故の際の補償がない自動車です。

 自動車を運転する際には、車検や自賠責保険の有効期間を日頃から確認し、早めの手続を行ってください。

3 まとめ

 自賠責保険は、車の所有者(使用者)に加入が義務付けられている強制保険です。
 車検や自賠責保険が切れた自動車で事故を起こすと、相手のケガや死亡に対する自賠責保険からの保険金が支払われませんので、被害者が最低限の賠償を受けられなくなる危険があります。

 自動車の所有者は必ず自賠責保険に入ってください。

 また、交通事故の被害者の方で、相手が自賠責保険に入っているか分からない時は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

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悪天候と交通事故

1 悪天候時の交通事故

 台風の接近や局地的な豪雨の最中に自動車の運転をすると、雨や強風の影響で、視界不良がおこったりハンドルを取られりするなど、交通事故の危険が高まります。

 台風などの悪天候の際にも、どうしても自動車の運転をしなければならないこともあるかと思います。

 悪天候の中で運転をする場合には、速度を落とし、車間距離を十分に空け、ライトをつけるなど、状況に応じて慎重な運転をする必要があります。

 ただ、慎重な運転をしていても、交通事故を起こしたり、交通事故に巻き込まれたりする場合はどうしてもあります。

 では、台風などの悪天候の影響を受けて交通事故が発生した場合には過失割合に影響があるのでしょうか。

2 台風などの影響と過失割合

 台風の際の交通事故であっても、原則としては過失割合の考え方に影響はありません。

 過失割合は、自動車の運転自体が様々な環境下で行われる前提で決められたものであるため、予測できるような影響を受けた程度では修正要素として考えられないからです。

 ただ、想定外の事情がある場合にまで全く修正されないというわけではなく、例外的に修正される場合もあります。

 例えば、駐停車ができない道路上で、想定できないような豪雨による視界不良があってもやむを得ず走行していたところ前方車両に追突したような場合には、過失割合が減る可能性があります。

 また、豪雨の際に冠水可能性が高い道路を無理に走行して冠水で立ち往生をしているところに他の車両が接触した場合など著しく不適切な判断を行った場合には、過失割合が増える可能性があります。

 台風や豪雨などの悪天候の際には、より慎重な運転を心がけてください。

3 交通事故のご相談は弁護士に

 悪天候での交通事故で過失割合の修正があるかどうかは、裁判例が通常より少なく、より慎重な判断が必要です。

 交通事故の際の過失割合に納得いかない場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

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交通事故の訴訟提起

1 夏の交通事故

 暑さが厳しい季節です。京都でも暑い日が続いております。

 夏はレジャーや帰省などで、慣れない場所の運転や、渋滞や長距離で長時間の運転をしていたり、暑さなどで疲労が溜まったまま運転をしていたりして、居眠り運転や漫然とした運転をして大きな事故がおこりがちです。運転の際には十分にお気を付けください。

 また、大きな交通事故の場合には、話し合いでは解決できずに裁判所で訴訟をして決着をつけることも多くなっています。

 では、訴訟を行う場合には、どこのどの裁判所で訴訟を提起するのでしょうか。

2 裁判の管轄

 交通事故で訴訟をする場合には、簡易裁判所で訴訟を提起する場合と地方裁判所で訴訟を提起する場合があります。

 訴えの対象となる金額が原則として140万円以下の場合には、原則として簡易裁判所に訴訟を提起します。訴えの対象となる金額が140万円を超える請求をする場合には、地方裁判所で訴訟を提起します。

 地方裁判所は請求する金額が大きかったり内容が複雑だったりする訴訟を担当することになっていますので、まずは請求する金額でどの裁判所に訴訟を提起するかを決めています。

 次に、どこの裁判所に裁判を提起できるかの場所を決めることになります。

 裁判は、原則として、被告(相手方)の住所地を基準にして、その地域の訴訟を担当する裁判所で提起をできます。また、交通事故の裁判の場合は、原告(訴える方)の住所地を担当する裁判所でも提起できますし、事故が起こった場所を担当する裁判所にも裁判を提起することができます。

 当事者本人が訴訟をする場合には、期日に裁判所に行かなければなりません。

 また、代理人がいて本人が出廷しなくてもよい場合でも、裁判を続けていくと当事者尋問や証人尋問など、ご本人や関係者に裁判所で話をしてもらう機会があります。現場を実際に確認する必要がある場合などで裁判官に直接事故現場を確認してもらうこともあります。

 その際に裁判所や事故現場への行きやすさが重要になりますので、裁判をどこで行うかはとても大切です。

3 移送申立

 裁判をどこで行うかが重要なため、訴訟を提起した後に相手から別の裁判所で審理するように移送申立がされることがあります。例えば、相手が遠隔地に住んでいた場合などに、相手の住所地を担当する裁判所に移送するように求めてくる場合があります。

 移送申立がされると、申立書で移送先とされている裁判所が担当するべきか、訴訟を提起された裁判所で担当するべきか、当事者双方から意見が出され、最終的に裁判所が移送するかどうかを決定します。

 例えば、宇治市に住んでいて宇治簡易裁判所に訴訟を提起したのに、相手が亀岡市に住んでいた場合には亀岡簡易裁判所への移送申立をされることがあります。旅行先や仕事先で事故があった場合などでは、他府県の裁判所への移送申立をされることもあります。

 訴訟の内容の審理に入る前に、どこで訴訟を担当するかが争われることがあるのです。

4 訴訟は専門家にお任せください

 交通事故の被害者が訴訟を提起する場合にも、どこのどの裁判所に提起できるかのルールや、場所によるメリットやデメリットがある場合があります。

 交通事故の訴訟は、弁護士にお任せください。

 

 

 

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むちうちの後遺障害と検査の必要

1 むちうちの後遺障害

 交通事故によるむちうちで痛みなどの症状が残った場合、後遺障害等級は、非該当になったり、14級9号に認定されたり、12級13号に認定されたりします。

 後遺障害等級14級9号の場合には、症状固定時に残った症状が永久に残ることを神経学的検査所見や画像所見などから証明まではできていなくても、受傷時の状態や治療の経過などから連続性・一貫性が認められて説明可能な症状と言える必要があります。

 治療経過の連続性や一貫性が必要となる以上、非該当と判断されないためには、ある程度の頻度で医師の経過観察を定期的に受けておくことが必要です。

 また、身体に症状が残るような衝撃を受けて強い症状が残存していることを医学的な見地や他の外部的な事情などから推認する必要がありますので、事故態様、事故の衝撃の大きさ、事故時の体勢、その後の通院実績、治療や投薬内容、自覚症状の重篤性・常時性、当事者の年齢なども重要です。

2 むちうちの後遺障害と他覚所見

 むちうちで後遺障害等級12級13号となるための基準では、症状が神経学的検査や画像など他覚的な所見により医学的に証明できることが必要です。そこで、MRI画像などで症状と合致する明らかな脊髄や神経根への圧迫など所見が必要になります。

 むちうちの治療後に残存する症状が重い場合でも、明らかな他覚所見が残っていることは多くはなく、事故から早いうちに検査をして証明が可能になるよう証拠を残しておく必要があります。

 外傷性の他覚所見は、事故から時間が経ってしまうと外傷性の物かどうかが不明確になってしまうなどして証明できなくなってしまうこともあります。

 適切な時期に検査をしておかなければ、事実が分からないままになって証明できなくなります。後から原因が分かったとしても、時間が経てば交通事故との因果関係が不明確になってしまいます。

 また、検査をしてみて異常がなかった場合でも、疑われていた傷病でないことは明らかになりますので、今後の治療の際にも役立ちます。

 証拠として客観的な資料が残るというだけでなく、適切な治療を受けるためにも、医師から検査等を勧められた場合には積極的に検査を受けて原因を探っておいたほうがよいでしょう。

 弁護士法人心では、無料で交通事故被害の相談にのらせていただいていますので、お気軽にお問い合わせください。

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自転車の交通違反

1 自転車と道路交通法の適用

自転車も軽車両になりますので、道路交通法などの法律が適用されます。

飲酒運転はもちろん禁止されていますし、信号無視や夜間の無灯火も違反になります。

また、原則として車道の左側通行をする必要があります。

2 道路交通法の改正

先日、道路交通法の改正案が国会で可決されました。

近年、自転車に対する規制が徐々に厳しくなっていますが、近々、自転車への規制が更に厳しくなることになります。

例えば、16歳以上の自転車の交通違反についても反則金納付を通告できる交通反則切符(青切符)制度の導入を柱とする道路交通法改正案が可決されたため、軽車両についても交通違反で青切符を切られて反則金を支払う事例がでてくることになります。

反則金は、行政罰として行政責任を問うもので刑事罰とは異なります。反則金を期限までにきちんと納付すれば刑事裁判の審判を受けなくなるため前科にはなりません。しかし、反則金を未納のまま放置すると刑事罰を受ける可能性があります。

他にも自転車に対する交通違反の罰則も強化されます。

3 自転車での交通事故の民事賠償

自転車で交通事故を起こして加害者となれば損害賠償をしなければならなくなります。

自転車で加害者となった場合に保険に入っていないと、莫大な民事賠償金を請求されてしまうこともあります。

また、自転車に乗っていて交通事故の被害者となった場合でも、交通違反の点は過失として取り扱われて、受け取ることができる賠償金が少なくなってしまします。

自動車と自転車との交通事故の場合には、ケガが重症になることも多いため、自転車に乗る際には十分な注意が必要です。

自転車に乗っていて交通事故の被害者になった場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

また、自転車を運転する際には、交通違反にならないように安全運転を心がけてください。

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