自賠責保険による賠償について

 少しずつ夏が近づいてきましたが,皆様お元気でしょうか。
 体調にお気をつけてお身体をご自愛ください。

 この度,弁護士法人心は,四日市市に事務所を開設いたしました。
 三重県内では、3か所目、全国では11か所目の事務所となります。
 四日市市の近郊にお住まいの方は,弁護士法人心四日市法律事務所でのご相談もご検討ください。

 では,本日は,自賠責保険について,少しお話したいと思います。

1 自賠責保険とは
  自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は,原動機付自転車(原付)を含むすべての自動車に加入が法律上義務付けられている保険です。
  自賠責保険は,交通事故による被害者を救済を目的としており、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることにより、最低限の対人賠償を確保しています。
  そこで,物損については,自賠責保険からの賠償はありません。
  車の修理代を自賠責保険に請求したいという方がいらっしゃいますが,制度上請求することはできませんので,相手が任意保険に入っていなければ本人に請求するか自分の車両保険を使うしかありません。

2 重大な過失による減額
  自動車事故でケガをした方の過失が10割の場合には自賠責保険からの賠償もありませんが,10割未満の場合には加害者であっても何らかの自賠責保険金の支払いを受けることができます。
  傷害部分の損害について,過失割合が7割以上10割未満の場合には,自賠責保険の範囲内であっても原則として賠償金は2割の減額がされます。
  ただ,損害額が20万円未満の場合には,減額はありませんし,減額により20万円以下となる場合には20万円が賠償されます。
  傷害部分の損害について,過失割合が7割未満の場合には,自賠責保険の範囲内であれば賠償金の減額はありません。
  後遺障害や死亡に係る損害についても,7割以上過失がある場合には,過失の割合に応じて減額がされます。
  傷害部分よりも過失による減額の割合が大きいため,大きなケガをした場合には加害者であっても過失は重要です。
  また,自賠責保険は重大な過失がなければ過失が考慮されないため,過失が考慮される裁判基準よりも自賠責保険の保険金額のほうが高くなる場合もあります。
  示談金の金額について気になった方は弁護士に相談したほうがよいでしょう。

3 自賠責保険からの傷害部分の賠償金 
  自賠責保険の保険金額は,原則として120万円を限度としています。
  治療関係費,文書料等や休業損害,慰謝料をすべて合わせて120万円を限度に自賠責保険から支払いを受けることができます。
  賠償金額が120万円を超えることはよくあることですので,自動車を運転される方は任意保険には必ず加入してください。
  自賠責保険の慰謝料は通院1日につき4200円でしたが,令和2年4月1日以降に発生した事故からは1日につき4300円になり,休業損害や看護料等のいくつかの項目についても,改正がありました。
  自賠責保険の慰謝料の計算方法を見て勘違いする方もいらっしゃいますが,自賠責保険の慰謝料は通院期間と実通院日数の2倍の「いずれか少ないほう」を基準に計算します。
  そこで,ケガをされた方が毎日病院に通っても通院期間以上の金額をもらうことはできません。
  2日に1回以上通っても,通院期間のほうが少なくなりますので,通院期間での計算になりますから,自賠責保険の慰謝料計算上の金額は同じです。
  また,全体として自賠責保険の120万円の上限を超えた場合には,自賠責保険からはそれ以上の支払いはありません。
  仮に加害者が任意保険に入っていても,自賠責保険の上限を超えた場合には,自賠責保険の計算方法とは違う計算方法で慰謝料を計算しますので,日割りで計算すると日額4300円を下回ることになることもよくあります。
  ただし,裁判基準でも,治療期間が長引けば慰謝料の増額幅が小さくなりますので,比例して慰謝料が増えるわけではありません。
  過剰診療と疑われることがないように,医師と相談しながら,必要な期間,必要な頻度で治療を行ってください。