交通事故でメガネやコンタクトレンズが壊れた時

1 交通事故での眼鏡の取り扱い

 交通事故で、医師が視力を補完するために必要と認めた眼鏡やコンタクトレンズが壊れた場合には、物損ではなく人身傷害として損害賠償を受けることが出来ます。

 眼鏡やコンタクトレンズについての損害は、物損のようにも思えますが、人の身体の一部の機能を代行しており、身体一部として身体に密着して使用されているので、人身損害に含まれることがあります。

2 人身損害となるメリット

 任意保険会社が対応しているときには、名目が違っても賠償金を受け取ることができればよいので、人身損害と物損を区別することはあまり重要ではないかもしれません。

 しかし、相手が任意保険に入っていなかったり、被害者の過失が大きかったりなど、一定の場合に自賠責保険に請求することがあり、その際には物損との区別が重要となることがあります。

 交通事故に伴う傷害で医師が認めた視力矯正のための眼鏡やコンタクトレンズが壊れた場合には、自賠責保険に対して請求できることがあるのです。

 例えば、医師が身体の機能を補完するために必要と認めた眼鏡が、交通事故の傷害に伴い、修理または再調達が必要になった場合、修理費用または再調達に必要な実費の支払いが認めらることがあり、原則としていずれか安い方を自賠責保険に請求することになります。

 ただし、自賠責保険上の眼鏡やコンタクトレンズに関する修理又は再調達費用は、5万円を限度としているので注意が必要です。

3 自賠責保険で人身損害として認められているその他のもの

 自賠責保険では、眼鏡やコンタクトレンズの他にも、義肢や義眼、補聴器、松葉杖なども、自賠責保険で補償の対象となる可能性があるものとして規定されています。

 これらの物品についても必要性がある場合には、修理費用または再調達に必要な実費が認められます。

4 再調達に必要な費用

 前述のとおり、眼鏡や補聴器等の事故による破損の場合には、修理費用または再調達に必要な実費が自賠責保険から支払われる可能性があります。

 例えば、医師が必要と判断して被害者の聴力を補完するために着けて補聴器が、交通事故に伴う衝撃で壊れて修理不能になり、再調達が必要になった場合には、再調達に必要な実費の全額が支払われることがあるのです。

 つまり、古い眼鏡や補聴器が事故で壊れた場合に、中古品として減価償却されることなく、新しく眼鏡や補聴器を作り直した費用の全額が、損害として認められることがあるのです。

 物損の場合には、修理費用かその物の時価(事故時の中古品としての市場価値)のいずれか低い方が賠償されますので、通常は新しく購入した費用の全額が補償されることはありません。例えば、視力矯正や眼の保護の必要もないのに、純粋におしゃれのためだけにかけていたサングラスが壊れて朱里出来ない場合には、中古品としての価格のみが賠償されます。

 しかし、医師が必要と判断した眼鏡や補聴器等の場合には、修理できないときには同等の眼鏡や補聴器を調達するために必要となった実費として、新しいものに買い替えた費用の全額が支払われる可能性があるのです。

5 弁護士にご相談ください

 交通事故で請求できるものは様々で、人身損害として請求できるかや何を根拠にどのように請求するのかで、金額が変わってくることがあります。また、被害者が請求できると知らなかったり、請求するのを忘れたまま示談をして請求できなくなったりすることもあります。

 交通事故にあった際には、なるべく早く弁護士にご相談ください。

 

 

同乗者と被害者側の過失

1 過失相殺

 民法722条2項は、「被害者に過失があったときには、裁判所はこれを考慮して損害賠償の額を定めることができる」と規定しており、これが損害賠償の際に過失相殺がされる根拠となっています。

 そして、民法722条2項の過失には、単に被害者本人の過失だけでなく、広く被害側の過失をも含む趣旨と解するのが相当である旨の判例があり、被害者と一定の関係がある場合には「被害者側の過失」として過失相殺されるとされています。

 例えば、親が運転している車両に乗っていて、親がが他の車と交通事故を起こした場合、同乗していた幼児の損害賠償の際には、親の過失が考慮されるのです。

 もちろん、単に同乗していただけでは、通常、同乗者は第三者として通常は過失相殺されません。

 では、どの程度の関係があれば被害者側の過失として過失相殺の対象となるのでしょうか。

2 被害者側の過失の考え方

 被害者側の過失は、「被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者」(最判昭和42年6月27日判決)といえるかどうかで判断されており、直接の加害者との公平上、経済的にも被害者と一体をなす実態が必要とされています。大まかにいうと、被害者と財布が一つと言えるような関係にある場合には、被害者側の過失として過失相殺をしてもよいと判断されているのです。

 例えば、双方に過失がある事故で親の車に同乗していた幼児がケガをした場合、本来は親にも子どもに過失分の損害を賠償する責任があります。共同不法行為ですので、加害者双方に全額を賠償する義務がありますが、全額を賠償した者は、他の共同不法行為者に自分の過失分を超えた賠償金の求償ができるようになるのです。

 そこで、加害者が他の加害者と共に損害発生に寄与している場合において、加害者が被害者との関係では全損害額を負担した後に共同不法行為者に対して求償をするよりも、被害者側の過失としてあらかじめ過失相殺して支払うなど内部関係として処理する方が公平かつ合理的です。

 つまり、加害者が、一旦被害者に損害を全額支払いした後に親に求償し、親が子どもの受け取った損害賠償額から求償された金額を支払うよりは、最初から親の責任分を控除して子どもに支払うほうが、先に支払った加害者が親からの求償金を受け取れないリスクもなくなり、公平かつ簡便なのです。

 「被害者側の過失」とは、損害の公平な分担という見地から認められる紛争の一回的解決のための手段なのです。裁判例上は、「被害者側の過失」は、家計を同一にする夫婦・親子間の関係が第一義的に想定されていますが、内縁の夫婦などこれに準じるような関係の場合には、同乗者であっても過失相殺される可能性があります。また、夫婦であっても、婚姻関係が破綻しているような場合には、過失相殺が認められない可能性もあります。

 3 その他の同乗者の過失相殺

 保険会社から、家計が全く別の他人である同乗者について、好意同乗の際などの際に無償で同乗していたから賠償金を減額すると主張することもあります。裁判例上、明確に被害者側の過失が否定されているケースであっても、保険会社側が「被害者側の過失が成立する」と主張するケースがあり、保険会社が様々な理由で過失相殺を主張して損害賠償額を減額しようとすることがあります。

 第三者である同乗者に過失相殺がされるのは、同乗者自身が事故発生に寄与している場合や、同乗者自身が事故の損害拡大に寄与していた場合、同乗者の車を他人に運転させて事故を起こした場合など、限られた場合のみです。

 例えば、飲酒、無免許運転、疲労困憊などの危険が発生する事情を知っていて運転を止めなかった場合、運転中に運転者を驚かせたり、速度違反や信号無視などの交通違反をするように囃し立てたりして安全運転を妨害して事故の原因を作ったり事故に関与していた場合、同乗者自身がシートベルトをしていないことでケガが酷くなった場合、同乗者が自分の車を一時的に他人に運転させていて運行供用者といえる場合などは、過失相殺の可能性があります。

4 同乗者のご相談

 同乗者に被害者側の過失として過失相殺をされるかどうかは非常に複雑です。

 また、本来は過失相殺が認められないような場合でも、保険会社側から過失相殺を主張されることもあります。

 交通事故の同乗者がケガをされた場合には、お早めに専門家である弁護士にご相談ください。

自賠責保険に入るタイミング

1 自賠責保険と車検

 自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は、自動車損害賠償保障法に基づいて、自動車(バイクや原付を含みます)の所有者が加入しなければならない強制保険です。自賠責保険に入っていない自動車を運転すると、懲役や罰金などの刑事処分を受けたり、免許の違反点数が加算されて免許停止などの行政処分を受けることになります。

 車検が切れたり、自賠責保険に入っていない自動車を運転することは絶対にやめてください。

2 自賠責保険の有効期限

 自賠責保険に加入していないと車検が受けられないため、通常は車検の際に自賠責保険も更新するようになっています。

 自賠責保険と車検は、満了時刻が異なるため、有効期限の関係で自賠責保険の期間は車検の有効期限より少し長めに設定されているのが一般的です。

 万一、何らかの理由で車検が遅れるなどしても、車検切れになってすぐに自賠責保険が使用できないというわけではありません。

 しかし、車検切れの自動車は、公道上を安全に走行する性能があるかどうか検査を受けていない自動車ですし、自賠責保険に入っていない自動車は、交通事故の際の補償がない自動車です。

 自動車を運転する際には、車検や自賠責保険の有効期間を日頃から確認し、早めの手続を行ってください。

3 まとめ

 自賠責保険は、車の所有者(使用者)に加入が義務付けられている強制保険です。
 車検や自賠責保険が切れた自動車で事故を起こすと、相手のケガや死亡に対する自賠責保険からの保険金が支払われませんので、被害者が最低限の賠償を受けられなくなる危険があります。

 自動車の所有者は必ず自賠責保険に入ってください。

 また、交通事故の被害者の方で、相手が自賠責保険に入っているか分からない時は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

悪天候と交通事故

1 悪天候時の交通事故

 台風の接近や局地的な豪雨の最中に自動車の運転をすると、雨や強風の影響で、視界不良がおこったりハンドルを取られりするなど、交通事故の危険が高まります。

 台風などの悪天候の際にも、どうしても自動車の運転をしなければならないこともあるかと思います。

 悪天候の中で運転をする場合には、速度を落とし、車間距離を十分に空け、ライトをつけるなど、状況に応じて慎重な運転をする必要があります。

 ただ、慎重な運転をしていても、交通事故を起こしたり、交通事故に巻き込まれたりする場合はどうしてもあります。

 では、台風などの悪天候の影響を受けて交通事故が発生した場合には過失割合に影響があるのでしょうか。

2 台風などの影響と過失割合

 台風の際の交通事故であっても、原則としては過失割合の考え方に影響はありません。

 過失割合は、自動車の運転自体が様々な環境下で行われる前提で決められたものであるため、予測できるような影響を受けた程度では修正要素として考えられないからです。

 ただ、想定外の事情がある場合にまで全く修正されないというわけではなく、例外的に修正される場合もあります。

 例えば、駐停車ができない道路上で、想定できないような豪雨による視界不良があってもやむを得ず走行していたところ前方車両に追突したような場合には、過失割合が減る可能性があります。

 また、豪雨の際に冠水可能性が高い道路を無理に走行して冠水で立ち往生をしているところに他の車両が接触した場合など著しく不適切な判断を行った場合には、過失割合が増える可能性があります。

 台風や豪雨などの悪天候の際には、より慎重な運転を心がけてください。

3 交通事故のご相談は弁護士に

 悪天候での交通事故で過失割合の修正があるかどうかは、裁判例が通常より少なく、より慎重な判断が必要です。

 交通事故の際の過失割合に納得いかない場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

交通事故の訴訟提起

1 夏の交通事故

 暑さが厳しい季節です。京都でも暑い日が続いております。

 夏はレジャーや帰省などで、慣れない場所の運転や、渋滞や長距離で長時間の運転をしていたり、暑さなどで疲労が溜まったまま運転をしていたりして、居眠り運転や漫然とした運転をして大きな事故がおこりがちです。運転の際には十分にお気を付けください。

 また、大きな交通事故の場合には、話し合いでは解決できずに裁判所で訴訟をして決着をつけることも多くなっています。

 では、訴訟を行う場合には、どこのどの裁判所で訴訟を提起するのでしょうか。

2 裁判の管轄

 交通事故で訴訟をする場合には、簡易裁判所で訴訟を提起する場合と地方裁判所で訴訟を提起する場合があります。

 訴えの対象となる金額が原則として140万円以下の場合には、原則として簡易裁判所に訴訟を提起します。訴えの対象となる金額が140万円を超える請求をする場合には、地方裁判所で訴訟を提起します。

 地方裁判所は請求する金額が大きかったり内容が複雑だったりする訴訟を担当することになっていますので、まずは請求する金額でどの裁判所に訴訟を提起するかを決めています。

 次に、どこの裁判所に裁判を提起できるかの場所を決めることになります。

 裁判は、原則として、被告(相手方)の住所地を基準にして、その地域の訴訟を担当する裁判所で提起をできます。また、交通事故の裁判の場合は、原告(訴える方)の住所地を担当する裁判所でも提起できますし、事故が起こった場所を担当する裁判所にも裁判を提起することができます。

 当事者本人が訴訟をする場合には、期日に裁判所に行かなければなりません。

 また、代理人がいて本人が出廷しなくてもよい場合でも、裁判を続けていくと当事者尋問や証人尋問など、ご本人や関係者に裁判所で話をしてもらう機会があります。現場を実際に確認する必要がある場合などで裁判官に直接事故現場を確認してもらうこともあります。

 その際に裁判所や事故現場への行きやすさが重要になりますので、裁判をどこで行うかはとても大切です。

3 移送申立

 裁判をどこで行うかが重要なため、訴訟を提起した後に相手から別の裁判所で審理するように移送申立がされることがあります。例えば、相手が遠隔地に住んでいた場合などに、相手の住所地を担当する裁判所に移送するように求めてくる場合があります。

 移送申立がされると、申立書で移送先とされている裁判所が担当するべきか、訴訟を提起された裁判所で担当するべきか、当事者双方から意見が出され、最終的に裁判所が移送するかどうかを決定します。

 例えば、宇治市に住んでいて宇治簡易裁判所に訴訟を提起したのに、相手が亀岡市に住んでいた場合には亀岡簡易裁判所への移送申立をされることがあります。旅行先や仕事先で事故があった場合などでは、他府県の裁判所への移送申立をされることもあります。

 訴訟の内容の審理に入る前に、どこで訴訟を担当するかが争われることがあるのです。

4 訴訟は専門家にお任せください

 交通事故の被害者が訴訟を提起する場合にも、どこのどの裁判所に提起できるかのルールや、場所によるメリットやデメリットがある場合があります。

 交通事故の訴訟は、弁護士にお任せください。

 

 

 

むちうちの後遺障害と検査の必要

1 むちうちの後遺障害

 交通事故によるむちうちで痛みなどの症状が残った場合、後遺障害等級は、非該当になったり、14級9号に認定されたり、12級13号に認定されたりします。

 後遺障害等級14級9号の場合には、症状固定時に残った症状が永久に残ることを神経学的検査所見や画像所見などから証明まではできていなくても、受傷時の状態や治療の経過などから連続性・一貫性が認められて説明可能な症状と言える必要があります。

 治療経過の連続性や一貫性が必要となる以上、非該当と判断されないためには、ある程度の頻度で医師の経過観察を定期的に受けておくことが必要です。

 また、身体に症状が残るような衝撃を受けて強い症状が残存していることを医学的な見地や他の外部的な事情などから推認する必要がありますので、事故態様、事故の衝撃の大きさ、事故時の体勢、その後の通院実績、治療や投薬内容、自覚症状の重篤性・常時性、当事者の年齢なども重要です。

2 むちうちの後遺障害と他覚所見

 むちうちで後遺障害等級12級13号となるための基準では、症状が神経学的検査や画像など他覚的な所見により医学的に証明できることが必要です。そこで、MRI画像などで症状と合致する明らかな脊髄や神経根への圧迫など所見が必要になります。

 むちうちの治療後に残存する症状が重い場合でも、明らかな他覚所見が残っていることは多くはなく、事故から早いうちに検査をして証明が可能になるよう証拠を残しておく必要があります。

 外傷性の他覚所見は、事故から時間が経ってしまうと外傷性の物かどうかが不明確になってしまうなどして証明できなくなってしまうこともあります。

 適切な時期に検査をしておかなければ、事実が分からないままになって証明できなくなります。後から原因が分かったとしても、時間が経てば交通事故との因果関係が不明確になってしまいます。

 また、検査をしてみて異常がなかった場合でも、疑われていた傷病でないことは明らかになりますので、今後の治療の際にも役立ちます。

 証拠として客観的な資料が残るというだけでなく、適切な治療を受けるためにも、医師から検査等を勧められた場合には積極的に検査を受けて原因を探っておいたほうがよいでしょう。

 弁護士法人心では、無料で交通事故被害の相談にのらせていただいていますので、お気軽にお問い合わせください。

自転車の交通違反

1 自転車と道路交通法の適用

自転車も軽車両になりますので、道路交通法などの法律が適用されます。

飲酒運転はもちろん禁止されていますし、信号無視や夜間の無灯火も違反になります。

また、原則として車道の左側通行をする必要があります。

2 道路交通法の改正

先日、道路交通法の改正案が国会で可決されました。

近年、自転車に対する規制が徐々に厳しくなっていますが、近々、自転車への規制が更に厳しくなることになります。

例えば、16歳以上の自転車の交通違反についても反則金納付を通告できる交通反則切符(青切符)制度の導入を柱とする道路交通法改正案が可決されたため、軽車両についても交通違反で青切符を切られて反則金を支払う事例がでてくることになります。

反則金は、行政罰として行政責任を問うもので刑事罰とは異なります。反則金を期限までにきちんと納付すれば刑事裁判の審判を受けなくなるため前科にはなりません。しかし、反則金を未納のまま放置すると刑事罰を受ける可能性があります。

他にも自転車に対する交通違反の罰則も強化されます。

3 自転車での交通事故の民事賠償

自転車で交通事故を起こして加害者となれば損害賠償をしなければならなくなります。

自転車で加害者となった場合に保険に入っていないと、莫大な民事賠償金を請求されてしまうこともあります。

また、自転車に乗っていて交通事故の被害者となった場合でも、交通違反の点は過失として取り扱われて、受け取ることができる賠償金が少なくなってしまします。

自動車と自転車との交通事故の場合には、ケガが重症になることも多いため、自転車に乗る際には十分な注意が必要です。

自転車に乗っていて交通事故の被害者になった場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

また、自転車を運転する際には、交通違反にならないように安全運転を心がけてください。

交通事故で第三者に損害が発生した場合

1 交通事故の損害賠償責任

 交通事故により発生した損害は、その過失割合に応じて賠償する責任があります。

 交通事故の当事者同士であれば、基本的には加害者側が賠償をすることになり、賠償の際に自分の過失分が差し引かれたり、自分の保険を使って過失分の賠償をしたりすることになります。

2 第三者に損害が発生した場合

 一方、交通事故に責任がない第三者が事故に巻き込まれた場合には、第三者にとっては事故の責任を負っている者すべてが加害者になります。

 複数の加害者が共同して損害を与えた場合には、通常は、共同不法行為として加害者全員が被害者に対して不真正連帯債務を負います。

 例えば、交差点で自動車同士が衝突した勢いで歩道に突っ込んで歩行者にケガを負わせたり、電柱を壊したりしたり、自動車の同乗者にけがをさせた場合には、自動車の運転者が共同して第三者に損害を負わせたとして共同不法行為となることがあります。

 共同不法行為の場合には、不真正連帯債務を負う者がそれぞれ損害の全額を賠償する義務を負います。被害者は加害者のそれぞれに全額の損害賠償請求をしてもよいのです。

 ただし、債務は1つですので、賠償を受けた分の債務は消滅し、損害額を超えて賠償を受け取ることはできません。加害者の誰かから損害賠償額の全額を受け取れば、他の加害者に請求をすることができなくなります。

 被害者は、加害者のうち一人でも任意保険や資力があれば救済されることになりますので、被害者の権利が保護されることになります。

3 共同不法行為責任を負った一人が被害者に対して損害を賠償した場合

 共同不法行為責任を負った者のうちの一人が被害者に賠償を行った場合には、自身の責任割合を超えて損害を賠償した部分について、他の共同不法行為責任を負った者に対して求償することができます。

 例えば、第三者の損害が100万円で、全額の賠償した加害者の過失が3割、もう一人の加害者の過失が7割であれば、全額の賠償した加害者はもう一人の加害者に70万円を支払うよう請求できます。

 最終的には、加害者は過失割合に従って交通事故によって発生した損害賠償をしなければならなりません。

4 交通事故で加害者が複数いる場合

 交通事故で加害者が複数いる場合には、誰にどのように請求を行うかは非常に複雑ですが、被害者にとってとても重要となることがあります。

 交通事故に巻き込まれた被害者の方は、お早めに弁護士にご相談ください。

ながらスマホの危険性

1 ながらスマホの禁止

 自動車の運転中(停止している時を除く)に、スマホやカーナビなどの携帯電話等の画像を注視したり、スマホを保持して通話したりすることは、道路交通法道第71条 第5号の5で禁止されています。

 運転中に携帯電話等を使用した場合には、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金の罰則、大型車の場合は2万5000円、普通車の場合は1万8000円、二輪車の場合は1万5000円、原付の場合は1万2000円の反則金、違反点数3点となります。

2 ながらスマホで交通事故を発生させた場合

 また、携帯電話等の使用だけでなく、それによって交通の危険を生じさせた場合には、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金の罰則と、違反点数6点となります。交通の危険を生じさせた場合には、非反則行為となり、すべて刑事罰の対象となります。

 また、違反点数6点は免許停止処分の対象となります。ながらスマホで交通事故を発生させた場合には、それだけで免許停止処分となります。

 ながらスマホは危険な行為として重い処分の対象となっているのです。

3 ながらスマホの危険性

 ながらスマホなどによる交通事故は、厳罰化されたことにより一旦は減少しましたが、それでもなお一定数の交通事故が発生し続けています。スマホのハンズフリー機能を使用した場合には道路交通法違反にはなりませんが、集中力が低下してしまうことも多く、事故が発生しやすくなっています。

 自動車はブレーキを踏んでから停止までに距離が必要になりますのでスピードが出た状態でブレーキ操作が遅れると、重大な事故につながってしまいます。

 京都市内は観光客も多く道路も複雑なため、カーナビやスマホの道案内機能などを使用している方もたくさんいらっしゃいます。

 交通事故を防ぐためにも、運転中にカーナビやスマホを使用する際には音声機能を使っていてもスピードをなるべく落としておいたり、停車中に使用するなど、十分注意をしてご使用ください。

年度末に増える交通事故

1 交通誘導による事故

 年度末で工事が多かったり、急いでいる方が増えたりするなど、3月になると交通事故が増えてきます。

 工事現場付近では、大型車両などの作業車や作業員の出入りなどがあり、交通事故が増えやすくなります。

 そのため、交通誘導員が配置されていることもあります。

 ところが、交通誘導員には資格が必要であるとはいえ、道路交通法に基づく権限を有しいるわけではありません。

 交通誘導員の指示には、警察の指示のような道路交通法上の権限がないのです。

 交通誘導員の指示は、あくまでも法律上の強制力がないお願いですので、交通誘導員から指示を受けても運転手が指示に従うかどうかは、道路交通法と安全の面から運転手が判断しなければなりません。

 交通誘導員が指示したからといって、何も考えずに従って交通事故をおこしてしまったとしても、運転手は道路交通法に従った適切な判断していなければ、運転手の責任となります。

2 交通誘導員の過失

 交通誘導員が明らかに道路交通法に違反した指示をして、指示に従ったことが原因で運転手が交通事故を起こした場合には、交通誘導員に注意義務違反があれば過失として認定される可能性はあります。

 しかし、交通誘導員に過失があったとしても、交通誘導に従うと判断したのはあくまで運転手ですので、通常は運転手の過失のほうが大きくなります。

 あまり数は多くはないですが、裁判例をみてみると、仮に交通誘導員に過失が認められるとしても10%から30%程度です。実際に運転していた運転手の過失の方が大きくなるのです。

 交通誘導員の指示に従った方が安全かつスムーズに走行できることが通常ですが、指示を信じて注意を怠れば思わぬ事故で加害者となってしまう可能性もあります。

 交通誘導を受けた際には、特に注意が必要です。

3 交通事故にご注意ください

 工事現場などで交通誘導員の指示を受けた場合には、指示に従うかどうかを含めて慎重な判断が必要になります。

 工事現場付近では、いつも以上に安全運転を心がけてください。

 万が一交通事故に遭ってしまった場合は、お早めに弁護士にご相談ください。

交通事故紛争処理センター

1 交通事故紛争処理センター

 先日は、広島の交通事故紛争処理センターに行ってきました。

 現在、私は、広島、名古屋、大阪の交通事故紛争処理センターで被害者の代理人としてあっ旋手続を行っています。最近は保険会社との話し合いで和解することが難しいことも多くなり、裁判所や交通事故紛争処理センターで手続きをすることも増えてきました。

 交通事故紛争処理センターは、裁判外紛争処理機関のひとつで、自動車事故の被害者と加害者又は加害者加入の保険会社や共済組合が、納得可能な解決策を見つけて示談するために中立の立場で仲裁を行う団体です。

 交通事故紛争処理センターには、東京本部、札幌支部、仙台支部、名古屋支部、大阪支部、広島支部、高松支部、福岡支部の本部・支部とさいたま相談室、静岡相談室、神奈川相談室の3つの相談室があります。申し立ては、申立人の住所地又は事故地におけるセンターの所在地に申立てます。

 交通事故紛争処理センターのあっ旋手続には基本的に出席することが求められているため、移動や手続き参加の時間がどうしてもかかります。

 主要な都市にしか支部等がないため、移動や拘束時間等を考えると、近くに支部等がない場合には、被害者本人が申し立てるのも大変です。

 交通事故紛争処理センターの手続きについても弁護士が代理人となることができます。

2 交通事故紛争処理センターはどのような場合に使用されるか

 自動車事故の際には、通常、まずは当事者同士や保険会社とで話し合いを行いますが、話し合いで解決できない場合で裁判が難しいような場合に、交通事故紛争処理センターは利用されます。利用のためのいくつかの条件や利用できない場合などもありますが、通常3回程度の比較的少ない回数のあっ旋手続で結論がでるようになっていますので、裁判をするよりも比較的早く妥当な解決ができることが特徴です。

 交通事故紛争処理センターでは、相談担当弁護士が、法律相談、和解あっ旋手続き、審査手続を行っており、法律知識がない被害者個人でも手続きができるように配慮がされています。

 個人の方が申し立てる場合には、法律相談からスタートすることになりますが、弁護士が代理人となって申立てるときには、和解あっ旋手続から開始します。

 通常、あっ旋手続は、申立人または申立代理人弁護士と保険会社担当者の双方が期日に出席して、順番に入れ替わりながら、交互に紛争処理センターの相談担当弁護士と話をして和解可能かを探っていきます。

 和解あっ旋によって双方が合意に至った場合には、相談担当弁護士の立会のもとで、示談書又は免責証書が作成されて、その後支払いが行われます。

3 あっ旋手続が不調の場合と審査・裁定

 相談担当弁護士があっ旋不調(和解できない)と判断したときは、あっ旋手続が不調となったことが申立人および相手方保険会社に通知され、あっ旋不調の通知を受けた日から14日以内に限り、双方が審査の申立を行うことができます。その場合は、センターでは3人の審査員から構成する審査会を開催し、審査・裁定を行っています。

 審査を申し立てた場合には、事前に相談担当弁護士が関係書類等とともに審査会に事案の争点や当事者の主張の説明をしており、通常は、開催日にはその内容について申立人側と保険会社の担当の双方が出席のうえで説明や主張を行います。この時点では交渉は行えず、審査会に出席できるのは当事者双方又は代理人弁護士及び審査会が認めた者だけです。

 申立人は、裁定の告知を受けた日から14日以内に裁定に同意又は不同意する旨をセンターに回答します。期間内に回答のない場合は不同意とみなし、不同意の場合には手続は終了します。

 申立人は裁定には拘束されませんが、保険会社や共済組合は審査会の裁定を尊重することになっていますので、申立人が裁定に同意した場合には、事実上和解が成立します。

 申立人が同意した場合は、裁定の内容のとおりの示談書又は免責証書が作成され、それに基づいて保険会社等が支払手続を行います。

 保険会社や共済組合に対して事実上の強制力があるため、事情によっては裁判をせずにこのような交通事故紛争処理センターの利用を検討することがあるのです。

冬の交通事故

1 交通事故が多くなる時期

京都も冷え込むようになってきて段々と年末が近づいてきたことを実感しております。

年末が近づき寒さが厳しくなると、日が暮れるのも早くなりますし、道路の凍結やバッテリートラブル、飲酒運転など交通事故の原因となることが多くなってきます。

交通事故の原因は様々ですが、車を運転していると自分だけの注意では事故を避けきれないこともあり、他の人の事故に巻き込まれてしまうことがよくあります。

今年も様々な事故態様の交通事故相談がありました。

年末年始は特に事故が多発いたしますので、くれぐれもお気を付けください。

2 交通事故の対策

交通事故対策は季節によって大きく変わるものではありませんが、冬の交通事故対策については、特に早めにライトを点灯し、車間距離は余裕をもって十分にとり、走行速度はゆっくりと走行することがあげられます。

冬になると日没までの時間が早くなり、周囲は急に暗くなります。ライトの点灯は早めに行い、周囲を照らすとともに自分が走行している位置を周りに知らせてください。

また、積雪や道路の凍結によるスリップ事故の発生、走行中の車両が突然のバッテリーやエンジントラブルにより停止する可能性があります。前方車両との車間距離を十分にあけ、何かあっても停車できるようにゆっくりとした走行を心がけてください。

また、イルミネーションの点灯などがあったりしてよそ見をすることや運転に集中できないこと、忘年会や新年会のシーズンでの酔っ払いの飛び出し、飲酒運転車両の走行など、この季節の道路には危険がいっぱいです。

冬の車両の運転は、特に安全を心がけてすぐに停車できるように速度を落として慎重に運転してください。

3 交通事故にあった場合には

交通事故の対策を行って交通事故の加害者になることは防げても、交通事故の被害者になることは完全には防げないこともあります。

交通事故の被害者になってしまった場合には、すぐに弁護士にご相談ください。

交通事故の裁判管轄

1 交通事故の民事裁判

交通事故で加害者を民事訴訟で訴える場合には、訴状を裁判所に提出します。

それでは、交通事故の相手を訴える場合には、どこのどのような裁判所に訴状を提出すればよいのでしょうか。

2 交通事故の事物管轄

まず、相手に請求する金額によって、簡易裁判所に訴えるのか、地方裁判所に訴えるのかが異なります。

原則として、訴額が140万円以下の場合には簡易裁判所に、訴額が140万円を超える場合には地方裁判所に訴えを提起します。もちろん簡易裁判所で審理が難しいような事情があれば、訴額が140万円以下でも地方裁判所で審理されることはありますが、基本的には訴額で分けられています。

請求金額が高い訴訟のほうがより複雑な可能性が高いですのでまずは金額で裁判所を分けています。

3 交通事故の土地管轄

交通事故で民事訴訟を提起する場合、通常は、加害者、運行供用者などの相手側の住所、居所の管轄裁判所、本人の住所また居所の管轄裁判所、または交通事故発生地を管轄する裁判所のいずれかの裁判所に訴状を提出します。

訴えを提起する際にどこで訴訟を提起するか選べますが、場合によっては相手の申し立てなどにより他の場所の裁判所が適切であると裁判所に判断されて移送されたりすることもあります。

また、民事訴訟法11条は,第1審に限り「合意により管轄裁判所を定めることができる」と定めていますので、当事者が合意すれば全く関係のない裁判所で裁判をされることもあります。

裁判所は全国にありますので、基本的には出廷がしやすい裁判所で訴訟を提起することが大切です。ご自身で訴訟を提起する場合はもちろんですが、代理人として弁護士に依頼すれば代わりに弁護士が裁判に出席することができますが、被害者本人も当事者尋問などで事故にあった本人が裁判所に出席しなければならないこともあります。

4 弁護士にご依頼ください

相手を裁判所に訴える場合には、この他にも様々なルールがあります。

また、裁判所は平日の決まった時間にしか対応しておらず、訴訟に出席するのも大変です。

交通事故の裁判を行う場合には、ご自身が不利にならないように必ず弁護士にご相談ください。

高速道路での交通事故

1 高速道路の特殊性

 高速自動車国道や自動車専用道路という高速道路の交通方法については、法律においても一般道路とは異なる規制があります。例えば、高速道路においては、最低速度を維持する義務があったり、横断・転回・後退が禁止されていたり、本線車道通行車の本線車道進入車に対する優先などが定められています。

 高速道路は自動車のみの通行が予定されており、一般道路よりも高速度での走行が予定されているため、高速道路における自動車の安全かつ円滑な走行のための特例となっているのです。

 そこで、高速道路では一般道路とは異なる注意が必要となることがあります。

2 高速道路で交通事故が発生した場合の対応方法

 高速道路で交通事故にあった場合には、後続車と自分の安全を確保するために一般道路とは異なる対応を行う必要がある場合がでてきます。

 高速道路で交通事故にあった場合には、急ブレーキとならないようにハザードランプを点灯させながら路肩によりつつ徐々に減速して停車し、停車車両の後方に発煙筒や三角版を設置して車両の存在を知らせます。後続車も高速度で走行しているため急ブレーキになると追突などの危険が発生するためです。

 また、できるだけ路上を歩くことはさけながらガードレールの内側などの安全な場所に避難します。高速道路上の車は後続車に追突される可能性が高いため、車内に残るよりも停車車両の後方のガードレール内などに避難したほうが安全なのです。

 そして、安全を確保した状態で通報をすることが求められています。

3 高速道路上の交通事故の過失割合

 このように高速道路では一般道路とは異なる対応を求められています。

 そこで、高速道路上の交通事故の過失割合についても、一般道路とは異なる過失割合になります。

 例えば、近くに横断歩道や交差点のない一般道路を横断する歩行者と自動車の事故では基本割合は歩行者20%、自動車80%になります。ところが、高速道路を横断する歩行者と自動車の事故の過失割合では歩行者の過失の方が高く、基本割合は歩行者80%、自動車20%となります。

 高速道路上の交通事故は高速度車両との事故になるため被害は大きくなりがちですが、過失割合については一般道路とは異なっており、判断が難しくなりがちです。

 高速道路で事故にあわれた方は、お早めに弁護士にご相談ください。

弁護士費用特約

1 弁護士費用特約

弁護士費用特約は、自動車保険などの任意保険を契約をする際に付けることができる特約です。

弁護士費用特約は、交通事故にあった際に相手に対して損害賠償請求を行うために発生する弁護士費用等の支払を自分の保険から受けられる特約ですので、弁護士費用を心配することなく事故の相手に対する対応の一切を弁護士に任せることができます。

弁護士に依頼すると、通常は、着手金、報酬金、実費など、費用がかかってしまいます。弁護士費用特約によって、弁護士費用が負担となって弁護士に依頼できないことがないように、支払いのカバーをしてもらえるのです。

2 弁護士費用特約を使用する場合

では、弁護士費用特約は、どのようなときに使用できるのでしょうか。

弁護士費用特約は、通常、事故の相手に対して何らかの請求をするときに使用できるものですが、過失や賠償金額での争いに使えるのは勿論、その時点では特に争いになっていなくても将来的に何らかの請求をする可能性があれば使用できます。例えば、将来的に賠償金を請求するのであれば、現在は何の問題もなく治療をしている場合でも、相手側との窓口として弁護士を使うときにも使用できるのです。相手や相手側の保険会社と直接話をしたくない場合などにも、早めに弁護士に依頼することができます。

弁護士に依頼すると多くの場合賠償金額が増えます。弁護士費用特約によって弁護士費用が自己負担にならないのであれば、安心して事故直後から弁護士に相手とのやり取りの一切をお任せください。

また、通常、弁護士費用特約はご家族や同乗者の交通事故でも使える制度になっていることが多いため、自分自身が弁護士費用特約に入っていなくてもご家族の保険や火災保険など他の保険の弁護士費用特約が使えないか探してみると弁護士費用特約が使えることがあります。ご自身の自動車保険に付帯していなくても、諦めずに他の保険を探してみてください。

3 弁護士費用特約を利用できない場合

弁護士費用特約は事故の相手に対する賠償請求のための保険ですので、自分の保険会社に対しては使用できません。過失が大きい場合などで自分の保険の人身傷害補償特約を使った場合に自分の保険会社が支払う保険金の金額に納得できなくても、弁護士費用特約を使うことはできません。

また、自然災害などの天変地異(地震・噴火・津波・台風)によって発生した損害、被害者自身やその身内(配偶者・親・子ども)、自動車所有者に対しての損害賠償など、保険の約款で除外されている場合や単独事故など相手がいない場合には使用できません。

4 弁護士へのご相談

弁護士費用特約に入っていれば、約款で決まっている弁護士費用については自己負担なく弁護士に依頼できます。

また、弁護士費用特約の上限を超えるような場合でも、上限までは弁護士費用特約で支払われますし、弁護士費用は弁護士の交渉で増額する金額で十分にカバーできます。

弁護士費用特約にご加入の方は、安心して弁護士法人心にご相談ください。

野生動物と事故

1 京都も台風の影響で強い風が吹いて、色々な飛来物が道路上に落ちたり、上空を飛んだりしていました。台風の中やその前後の運転は強風に煽られてハンドル操作を誤ったりすることもあるため大変危険です。また、持ち主の分からない飛来物が原因で事故が発生した場合は、基本的には注意を怠った運転者の責任となります。

 自動車を運転する際には特にご注意ください。

 では、飛び出してきたりする野生動物との自動車事故の場合はどのように考えるのでしょうか。

 基本的には、野生動物との自動車事故も飛来物と同じように考えられています。

2 レジャーなどで山奥や田舎に行ったりした際に、野生動物と自動車の衝突事故が発生することがあります。また、飛び出した野生動物を避けようとして、人や自動車との交通事故が起きてしまうこともあります。

  人間以外の動物は、物と同じように扱われますので、野生動物と自分の自動車が衝突しただけの場合には、自動車が塀や電柱などの物にぶつかったのと同じように扱われ、物損事故になります。

  ただし、野生動物は持ち主がいない物として取り扱われますので行政罰や刑事罰の対象になりません。後に自動車保険を使うことを考えると、自動車を物にぶつけた場合と同じように物損事故として警察に届け出ておいたほうがよいでしょう。

3 飛び出してきた野生動物と自分の自動車が衝突しただけの場合には、自損事故として取り扱われます。損害の請求する相手がいませんので、自分の自動車保険などを使って自動車の修理やケガの対応をしなければなりません。ご自身の車両保険や人身傷害補償などの保険を使用して事故に対応することになります。

 これに対して、ペットなど飼い主かいる動物の場合には、飼い主にも動物の管理責任がある場合がありますので、場合によっては飼い主にも一定の過失や責任が認められる場合もあります。

 この点、飼い主がいない野生動物の場合に道路に入り込まないようにしなかった道路の管理者への責任追及をしようとする方もいます。しかし、道路に完全に動物などが入り込まないようにすることは財政的にも現実的ではなく、事実上不可能ですので、よほどの理由がないと道路の瑕疵とは認められない傾向にあります。

  野生動物を避けようとして他の自動車などと事故を起こしてしまった場合には、通常は避けようとして事故を発生させた運転者の責任になってしまうのです。

  野生動物などの飛び出しの可能性がある道路では、特に運転に気を付ける必要があります。

  

 

交通事故の直後に被害者がやっておくべきこと

1 警察や救急への連絡

  交通事故が発生した場合には、自分がケガをしていないか、同乗者や事故の相手側もケガをしていないかを確認して、ケガをしている人がいれば必要に応じて救急車を手配してください。

  運転者や乗務員には道路交通法上の救護義務があり、けがをした人がいる場合に救護せずに立ち去ると救護義務違反となってしまいます。

  まずは、交通事故でケガをした人がいないか確認してください。

  また、交通事故が発生した場合には、すぐに警察に連絡をしてください。

  警察に事故の報告をしないと、交通事故にあったこと自体が証明できなくなってしまうこともあります。また、交通事故の報告をすると、加害者の連絡先や自賠責保険番号など、一定の情報を警察が捜査して記録してくれます。警察が介入することで、相手と連絡が取れなくなるリスクが低くなります。

2 周囲の安全確保と事故状況の保存

  交通事故の二次災害を防ぐために、必要があればハザードランプや三角表示板や発煙筒を利用するなどして、後続車両に事故の発生を知らせなければなりません。

  また、自走可能であれば、道路の安全確保のために安全な位置まで車両等を動かすこともあります。

  車を動かして事故現場の状況が変わってしまうことになりますので、可能であれば事故直後の現場状況を撮影場所や方向や大きさ変えて何枚も写真に撮影しておくとよいでしょう。位置関係や車両の状況は過失で争いになった場合に非常に重要な証拠になります。車両を動かした後でも、自分や相手の車の損傷状況を写真で保存しておくと役に立つことがあります。

 また、車両の破損状況やケガの写真が、被害者に加わった衝撃の強さの証拠となり、治療期間や後遺障害認定で役立つことがあります。

3 証拠の確保

 事故直後は自分の非を認めていた加害者も、思い込みや自己保身のために双方の認識する事故状況が違ったり、言い分が変わったりすることもあります。

 自動車にドライブレコーダーがある場合にはドライブレコーダーの記録を保存しておいてください。時間が経ったり車両を走行させることで記録が上書きされてしまったり、移動や修理時の衝撃等で画像が消えてしまったりすることがあります。

 せっかくの貴重な事故の証拠がなくならないように、可能であればすぐに別の記録媒体などに保存しておいたほうがよいでしょう。

 また、事故の目撃者などがいる場合には、目撃者などの連絡先を確保してください。事故を目撃したり救護してくれた方がいたとしても、名乗ったりはせずにその場から立ち去ってしまうことが大半です。後から探そうとしても、通常はなかなか見つかりませんので、目撃者などの氏名や連絡先等の情報を確認しておいてください。

4 加害者の情報の確保と保険会社への連絡

  事故の加害者の氏名、住所、電話番号、任意保険や自賠責保険の情報を確認してください。

  交通事故にあった場合には、車両の修理などで加害者や加害者が加入している任意保険会社に連絡を取りながら手配を行わなければいけません。

  また、落ち着いてケガの症状が現れた際に事故の相手やその保険会社に連絡が取れないと、保険会社の一括対応が遅れて、通院開始が遅れたり、いったん自分で治療費を立て替えたりすることになります。

  すぐに相手と連絡が取れるように、事故の相手の情報を確認してください。また、電話番号などの間違いがないように、一度、その場で電話をかけてみておくと安心です。自賠責保険証は自動車に積んているはずですのでその場で写真を撮っておくと安心です。

  もちろん、相手の情報がわからなくても、警察に連絡していれば交通事故証明書に事故の相手の情報は記載されていますが、取得までに時間がかかってしまいます。

5 交通事故にあったらお早めに弁護士にご相談ください

  交通事故の直後は、ケガの状態が一番酷いにもかかわらず、車の修理などの交渉も含めて対応が必要な時期になります。

  交通事故にあった後、時間が取れるようになったら、なるべく早く弁護士に相談をしておくとよいでしょう。

交通事故の時効

1 交通事故で物が壊れた場合

  交通事故で物が壊れた場合には、その物的損害の損害賠償請求をすることができます。

  このような物的損害の損害賠償請求権は、不法行為による損害賠償請求権ですので、原則として損害と加害者を知ったときから3年で時効になります。交通事故の場合には、通常は、事故に遭った時に損害と加害者を知ることになりますので、交通事故発生の翌日から3年で時効になります。

  当て逃げなどで加害者が不明などであれば3年経っても消滅せずに加害者が見つかってから3年は時効になりませんが、不法行為時から20年が経過した時には時効により消滅します。

2 交通事故の人がケガをした場合

  交通事故で加害者からケガをさせられた場合には、加害者に対して損害賠償請求をすることになります。

  人身損害についての損害賠償請求権も、不法行為による損害賠償請求権ですが、原則として損害と加害者を知ったときから5年(令和2年4月1日の民法改正前に発生した事故の場合は3年)で時効になると定められています。

  また、ひき逃げなどで加害者が不明などであれば加害者が見つかってから5年は消滅しませんが、事故から20年が経過した時には時効により消滅します。

  交通事故の後遺障害については、ケガの時効とは別で、症状固定日の翌日より起算して5年(令和2年4月1日の民法改正前に発生した事故の場合は3年)で時効になります。

3 自賠責保険金(共済金)の時効

  自賠責保険に対する請求権は3年(平成22年3月31日以前に発生した事故については2年)で時効となり、自賠責保険の保険金を請求する権利が消滅します。

  現在は、交通事故にあった場合には、傷害部分については交通事故発生の翌日から、後遺障害については症状固定日から、死亡の場合は死亡した日の翌日から、それぞれ3年で時効になることになります。

  そこで、何らかの理由で自賠責保険に対する請求が遅れてしまう場合には、権利が時効消滅しないように時効更新の制度を使用する必要があります。時効の更新をするためには、自賠責保険会社に対し、時効更新(中断)申請書を提出することが必要です。

4 交通事故の民事損害賠償と時効

  交通事故で大けがをした際に、壊れたもののことまで対応できなくて、物的損害について時効になってしまうことがありますが、物損についてはケガとは別に早めに示談をしなければなりません。

  また、治療が長期にわたる場合には、時効にならないように時効を更新する必要があります。特に交通事故による後遺障害の時効は、症状固定日の翌日から5年で時効になりますので、症状固定日は厳格に判断して更新しておく必要があります。

  また、自賠責保険の時効は更新したので時効は大丈夫だと思っている方もいらっしゃいますが、自賠責保険に対する請求はあくまで自賠責保険への請求ですので、加害者に対する損害賠償請求権の時効は更新されません。

  自賠責保険に対する時効の更新とは別に、加害者に対する時効も更新しておかなければなりません。後遺障害の認定結果が納得できずに何度も異議申し立てをしていたり、相手保険会社の示談交渉を放置していたりして長期化してしまうと、いつの間にか加害者に対する請求が時効になって賠償請求ができなくなることもありますので、注意が必要です。

5 時効の更新

  自分の請求権が時効になりそうな場合には、時効の更新をして、時効の進行をリセットする必要があります。

  裁判上の請求をしたり、被害者に対する賠償義務があることを加害者自身に認めさせたり、当事者間で協議することに合意する書面や電磁記録を作ったりすることで、時効を更新することができます。

  しかし、被害者自身が時効の更新をすることは手間と時間がかかります。

 

6 治療が長期化する場合には弁護士にご依頼ください

  被害者の権利が時効になってしまうと、権利を行使することができなくなってしまいますので、賠償金を受け取ることができなくなります。交通事故の損害賠償請求件の時効管理には細心の注意が必要です。

  早めに弁護士に依頼しておけば、きちんと弁護士が時効にならないように対応いたします。

  交通事故で大きなケガをされた場合には、お早めに弁護士法人心にご相談のうえ、ご依頼されることを検討してみてください。

 

交通事故の結果と過失割合

1 交通事故の結果と過失割合

交通事故により発生した結果と過失割合は、原則として無関係です。

交通事故の結果としてどれだけ大きなケガをしたとしても、過失割合は客観的な事故の状況等によって決まりますので、関係ありません。

例えば、歩行者が赤信号を無視して横断しているときに、青信号で直進してきた自動車と衝突した場合には、通常は歩行者が大きなケガをする一方で車が大きく破損することはないので、通常は、交通事故の結果としては歩行者の損害の方がが大きくなります。

しかし、歩行者が大きなケガをしたとしても、赤信号で横断している以上は、原則として歩行者の過失が大きくなり、歩行者であっても加害者になります。

もちろん、歩行者は交通弱者ですので、基本的には保護されて過失を減らす方向になっています。

しかし、歩行者だからと言って交通ルールを守らなくてもよいわけではありません。

事故の状況によっては過失割合が大きくなって加害者になることもあります。

ケガをした場合には被害感情は大きくなりますが、事故状況をきちんと記録に残して、過失割合については冷静に話し合わなければなりません。

2 交通事故の過失割合については弁護士に相談を

このように、交通事故の過失割合は、事故の結果とは別に判断されます。

一方、過失割合が大きくても、損害自体が大きければ相手に請求できる場合もあります。

交通事故の加害者であっても、重い後遺障害が残ったり、亡くなったりした場合に、損害全体の金額が大きくなると、ある程度過失を差し引いたとしても相手に請求できるものがあることもあります。

また、加害者であっても100%の過失割合でなければ、自賠責保険から賠償金を受け取れるばあいもあります。

また、自分の入っていた保険会社を利用することで、一定の賠償金を受け取れることもあります。

交通事故にあった場合には、お早めに弁護士に相談してみてください。

自転車の乗車用ヘルメット着用義務

1 道路交通法の改正

令和5年4月1日に道路交通法第63条の11の改正がありました。

令和5年3月31日までは、児童又は幼児を保護する責任の保護者の方は、児童又は幼児を自転車に乗車させるときに、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットを着用させるよう努めなければならないという努力義務がありました。

しかし、令和5年4月1日以降は、自転車を運転する方が乗車用ヘルメットを着用するように努めなければならないのはもちろん、同乗する方にも乗車用ヘルメットを着用させるように努めなければならなくなりました。
また、児童や幼児の保護者等の方は、児童や幼児が自転車を運転する際は、乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければなりません。

このように、すべての自転車利用者の乗車用ヘルメットの着用義務が努力義務になりました。

2 乗車用ヘルメットの着用義務と過失

乗車用ヘルメットの着用義務は努力義務ですので、違反しても罰則があるわけではありません。

しかし、ヘルメットを着用しない場合の事故時には頭部の損傷が深刻になるため致死率が高くなっていたり、後遺障害が重くなる可能性が高くなります。

そこで、ヘルメットを着用していなかったことで被害が拡大したことを過失等と捉えて保険会社などが何らかの減額要素として主張してくる可能性もあります。

まだ努力義務ですので、シートベルトの着用のように法律上の義務ではありませんので過失とまでいえないかもしれませんが、実際にどのように判断されるかは今後の裁判の積み重ねがなければ分かりません。

自転車に乗っていて交通事故にあった場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

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