交通事故によるむちうちと他覚所見

1 むちうちの入通院慰謝料と他覚所見 

 他覚所見は、医師が自覚症状や器質的異常を裏付けると判断した、理学的検査、神経学的検査、臨床検査、画像検査等から導き出される異常所見をいいます。

 交通事故の入通院慰謝料の裁判基準は、入通院期間を基準に算定されますが、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(赤い本)では別表Ⅰと別表Ⅱに分かれていて、「むち打ち症で他覚症状がない場合等」は別表Ⅱを使用すると書かれています。別表Ⅱは別表Ⅰよりも金額が少ないですので、むちうちの慰謝料は他覚所見の有無により違っていることになります。

2 むちうちの後遺障害と他覚所見

 一般的に半年程度むちうちの治療をすると大幅な改善が見込めないことが多いですので、症状固定となってむちうちの後遺障害申請をすることになります。

 むちうちであっても、事故当初から常時痛が継続していて回復が困難であれば、自覚症状だけで他覚所見がなくても、「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害等級14級9号が認定されることがあります。 

 一方、MRI検査やCT検査での画像所見があり、画像所見などで明確に事故が原因でむちうちの症状が発生したことが他覚的に証明できれば、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、12級13号が認定される可能性があります。外傷性のヘルニアを発生する場合には非常に大きな外力が必要になりますが、ヘルニアなどの器質的異常により神経根の圧迫等が生じて、それにより対応する部位に痛みや痺れなどの症状が発生していれば、他覚所見が認められるとしてむちうちで12級が認定される可能性はあります。

 他覚所見の有無で後遺障害等級が違っており、等級によって賠償される金額が違っていますので、後遺障害においても他覚所見があるかどうかは非常に重要です。

3 むちうちと検査

 交通事故でむちうちになった場合には、検査等による他覚所見の存在が重要になります。検査をしてもむちうちの治療内容に違いはないかもしれませんが、被害者側が事故と症状の因果関係などの様々な事実についての最終的な証明責任を負っている以上、必要な時期に必要な検査を受けておくことは非常に重要です。

 また、他覚所見があれば治療の時間がかかることについて説明がつくため、様々な検査の結果は、保険会社との治療期間の打ち切り交渉においても役立ちます。

 交通事故で症状の改善が遅いような場合には、きちんと検査を受けて症状の原因を追究する必要があります。

 交通事故でむちうちになった場合には、お早めに弁護士にご相談ください。