雨の日の交通事故にご注意ください

1 最近は、京都でも激しい雷雨があったり、長時間雨が降り続いたりする日があったりしています。

 雨の日には、自動車を運転している場合でも歩いている場合でも視界が悪くなるため、事故が起こることが多くなっています。

 ワイパーや水滴、傘等によって視界が遮られて、水滴にライトが反射するなどして視界が悪くなると、交通事故は発生しやすくなります。

 また、雨により路面が濡れているためブレーキをかけてから停止するまでの距離が長くなってしまいます。

 雨の日には、自動車の速度を抑え、車間距離を十分にとって安全運転を心がけてください。

2 ただ、ご自身がいくら事故に気を付けていたとしても、追突事故の被害者となってしまうというような形で交通事故に巻き込まれてしまう場合もあります。

 赤信号や渋滞、一時停止に従って停車しているなど、必要があって停車している際に後方から追突される場合には、基本的には停車している車に過失はありません。

 追突した車の前方不注視や車間距離不保持などの一方的な過失に因る事故と考えられるためです。

 一方、危険防止のため等のやむを得ない理由がないにもかかわらず急ブレーキをかけたことで後方の車が追突したのであれば、急ブレーキをかけた車にも過失があることになります。

  事故の状況によっては割合について修正が加わるなどして過失は異なってきますので、詳細な事情を伺わないと、過失についての判断はできません。

3 交通事故の過失についてのご相談は弁護士法人心京都法律事務所にご相談ください。

  正確に過失を判断するためには、道路状況や双方の車両の動きなどをきちんと把握する必要があります。

  過失は損額賠償の金額に直結する重要な要素ですが、物損の損害賠償の際に安易に和解してしまうとケガについても適用されて大きな不利益が発生することがしばしばあります。

 和解の前にはぜひ弁護士にご相談ください。

給与所得者の休業損害証明書作成

京都も梅雨に入ってから雨の日が多くなってきています。

雨の日は交通事故が起こりやすくなっておりますので、皆様お気を付けください。

さて、今回は休業損害証明書について、お話をします。

1 休業損害証明書はいつ誰が作成するのか

交通事故にあった会社員やアルバイトなどの給与所得者が、ケガなどが原因で仕事を休んだ場合には、休業損害証明書を作成して仕事を休んで収入が減額したことを証明する必要があります。

給与所得は生活にかかわっていますので、早急に請求する必要がある場合には、事故から給与の締め日までの分など、ある程度の区切りをつけて一定期間分を何回かに分けて休業損害証明書を作成して請求していくことがあります。

また、休業日数が少なく生活に影響が少ない場合などには、症状固定時に事故発生時点からの全ての期間の休業損害証明をまとめて休業損害証明書を作成して、示談交渉をする前に提出することもあります。

では、保険会社から、休業損害証明書の用紙や記載例を渡された場合には、どのようにすればよいのでしょうか。

休業損害証明書は、自分で作成するものではなく、勤務先の会社に作成をお願いするものです。

時々、被害者の方が記載例を見ながら作成しようとしている場合がありますが、ご自分で作成するものではありません。お仕事を休んだ会社に持参して作成をお願いするものです。

勤務先の会社が大きな会社ですと総務部や人事部が担当している場合が多いですが、中小企業の場合には社長自らが作成してくれる場合もあります。

会社の中で誰が休業損害証明書の作成を担当しているかは会社によって異なっていますが、ご自分で作ろうとはせずに勤め先に用紙をもっていって、担当の方に作成をお願いしてください。

派遣社員の方は、派遣先ではなく、派遣元の派遣会社に作成をお願いすることになります。

2 休業損害証明書の訂正

休業損害証明書には、会社の印鑑を押したり、担当者の名前や連絡先を書く欄もあります。

担当者が慣れていなくて、間違いなどがある場合には、直接保険会社から担当者に連絡がいき、担当者が訂正をすることもあります。また、修正をお願いするように被害者に返送されてくる場合もあります。

保険会社から返送された書類の訂正を担当者にお願いしづらかったり、訂正に時間がかかるのを嫌がって自分で直そうとする方がいらっしゃいますが、絶対に自分で勝手に休業損害証明書に書き込んだりしないでください。

些細な誤記でも、勝手に自分で修正しようとはせずに、必ず担当者に訂正をお願いしてください。

権限のない方が勝手に内容を変えてしまうと、休業損害証明書の内容が全く信用されなくなったり、私文書偽造になったり、場合によっては虚偽の書類による休業損害の請求として詐欺になったりします。

休業損害証明書は、事故とはかかわりのない第三者である会社が、仕事を休んだことや給料の金額等を証明することが大きな意味をもっていますので、休業損害証明書の作成については勤務先に任せてください。

3 休業損害証明書に添付する書類や記載内容

休業損害証明書には、事故前年度の源泉徴収票を貼付する部分があります。

事故前年度に勤務先に在籍していないような場合には、源泉徴収票の代わりに事故前3か月の賃金台帳の写しを提出する場合もあります。

休業損害を請求する場合にはこれらの書類を揃えて、休業損害証明書と一緒に提出する必要があります。

また、休業損害証明書には、有給や欠勤、遅刻等の日数を記入する場所があります。

3 不明な点は弁護士にご相談ください

通常の有給休暇は、事故が原因で有給休暇を取得しなければ他のことに使用したり、買い取りをしてもらえる等、経済的な価値のあるものですので、事故が原因で収入が減少していなくても有給休暇を使用したことにより休業損害が発生したといえ、賠償を受けることができます。

保険会社は、事故が原因で会社を休んだことを知っていれば必要な書類を渡してくれますが、あまり詳しく説明してくれません。

また、有給休暇分の休業損害を請求することを知らなかったり、休んだかどうかを確認していない保険会社の担当者が書類を渡さずに被害者が休業損害の請求をしないまま示談をしてしまうこともあります。

一旦相手の保険会社と示談をしてしまうと、あとから追加で休業損害を請求することができなくなってしまいます。

交通事故の被害者の方で事故が原因でお仕事を休まれたりした方は、請求すべきものを請求できているかや支払い金額が正しいかどうかを、弁護士に相談して確認してみてください。

人身事故届出をしないことのリスク

1 交通事故証明書

  交通事故が発生して警察に届出た場合には、通常、交通事故証明書が作成されます。
  交通事故証明書は、交通事故の事実を証明する書類で、自動車安全運転センターに発行を申請すると交付されます。
  警察から提供された資料をもとに内容が作成されますので、警察に届出をしないと交通事故証明書は発行されません。
  また、被害者が、警察に診断書等を提出して人身事故の届出をしていなければ、「人身事故」と記載されず、「物件事故」と記載された書類になってしまいます。

2 人身事故証明書入手不能理由書
  それでは、人身事故にあった場合で、何らかの理由で警察へ人身事故の届出をせずに物件事故のままになっていた場合には、保険会社に対してケガに関する損害賠償を請求できないのでしょうか。
  警察に対して人身事故として届け出ていなかったとしても、事故の相手や目撃者等が事故でケガをしたことを認めていれば、人身事故証明書入手不能理由書を作成することにより、ケガについての損害賠償を受けることができることが多いです。
  人身事故証明書入手不能理由書は、交通事故に遭った際に人身事故扱いの交通事故証明書が入手できなかった理由を記載し、実際は人身事故があったことを示す書類のことです。
  加害者は、物件事故のままにすることで行政処分や刑事処分を受けずに済みますので、加害者にとってはメリットが大きいことになります。
  しかし、物件事故のままにすることは、ケガをした被害者にとってはリスクがあります。

3 人身届出をしないことのリスク
  人身事故証明書入手不能理由書では、多少記載が異なる場合がありますが、人身事故にしなかった理由を以下のような内容の5つの項目の中から選んで記載することになります。
 ・受傷が軽微で、検査通院のみ(予定を含む)であったため
 ・受傷が軽微で、短期間で治療を終了した(もしくは終了予定の)ため
 ・公道以外の場所(駐車場、私有地など)で発生した事故のため
 ・事故当事者間の事情(理由を具体的に記載してください。)
 ・その他(理由を具体的に記載してください。)
  このように、基本的にはケガをすれば人身事故届出をすることが通常と考えられていますので、人身事故届出をしないということはケガが軽微な場合や少なくとも事故当初は軽いケガだと思っていた場合であることが予想されることになります。
  そこで、人身事故届出をしない場合には、ケガが軽微であるとして保険会社に早めに治療費の負担を打ち切られたり、後遺傷害が認定されにくい方向に働くことがあるのです。
  このように、交通事故で人身事故届出をせずに物件事故のままにすることを検討する場合には、慎重に判断する必要があります。

4 人身事故届出の必要
  交通事故でケガをされた方は、原則としてはきちんと人身事故として警察届出て手続きをするべきです。
  何らかの理由でやむを得ず物件事故のままにして人身事故証明書入手不能理由書を使う場合には、本当に軽微なケガで後遺障害や長期の治療は必要がないと確信できる場合にすることが大切です。
  ただ、事故直後は軽傷と思っていても、むちうちのようにしばらくして症状がでてきたりするものもあります。
  京都で交通事故にあわれて何か迷っていることがあるかたは弁護士に相談してください。
  弁護士に相談することで、自分の行動に伴うリスクを把握してからどうするべきかを検討してください。

依頼者の本人確認

1 本人確認の必要性

今年もFATF(ファトフ)の年次報告書の提出期間が開始いたしました。
弁護士が依頼を受けることになると、依頼者の代理人として交渉をしたり、依頼者の代わりにお金を受け取って依頼者に返したりするなど、本人に代わってお金のやり取りをすることができます。
弁護士の仕事では大きな金額のお金を扱うこともあります。
お金のやり取りの際に弁護士の口座を間に挟むなどすることで犯罪収益のマネー・ロンダリングに利用されたりすると、弁護士全体が信用を失ってしまいます。
そこで、依頼者の本人特定事項の確認および記録保存等については、犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づき、日弁連の規程および規則が定められました。
弁護士は、現在、依頼者の本人確認をしたうえで、毎年4月から6月末までに毎年きちんと本人確認をしたのかを年次報告として弁護士会に報告します。
また、通常は、代理人として連絡してきたのが資格を持った弁護士であれば、代理権があると弁護士を信用して相手は対応しますので、依頼したのが本人になりすました別の人であるというようなことは許されません。
弁護士は、原則として、依頼を受ける前にきちんと依頼者の本人確認をする必要があるのです。

2 本人確認の方法

個人の方で依頼を考えている方の場合は、実際に弁護士と会って運転免許証やパスポート、顔写真入りのマイナンバーカードなどの顔写真入りの身分証明書の原本を見せていただいて、住所やお名前、生年月日等を確認すればご本人であることが分かります。
実際に依頼者本人と会って顔写真入りの身分証明書の原本等を確認し、コピーを撮らせていただくのが最も基本的な本人確認の方法になります。

顔写真入りの身分証明書をお持ちでない場合には、別の方法をとることになります。
健康保険証、年金手帳などの顔写真のない身分証明書の場合は、2種類の身分証明書の原本をお持ちいただき、住所やお名前、生年月日等を確認すればご本人と確認できます。
これらの身分証明書は、ご本人以外は取得できず、他人に原本を預けることも通常は考えられない書類です。
また、直接会うことができないなど場合には、対面の場合に必要となる身分証明書等のコピーをいただき、その身分証明書上の住所に転送不要の書留郵便で契約書等を送って受け取って契約書等を返送していただければ、ご本人からの依頼であると分かります。
依頼される内容等によっては、もっと厳格な本人確認をしなければならないとされていることもあります。

3 本人確認へのご協力をお願いいたします
依頼者本人にとっては、身分証明書を要求されるような事情がご自身にはないとお分かりですので、身分証明書を要求されて面倒に思われたりご不便をおかけするかもしれません。
しかし、本人確認は重要な制度ですので、ご依頼等の前には本人確認にご協力をお願いいたします。

弁護士法人心京都法律事務所の開設

1 弁護士法人心京都法律事務所の開設
令和3年2月1日に弁護士法人心京都法律事務所がオープンしてからあっという間に1か月以上が過ぎてしまいました。
私個人としては新たな京都での生活を楽しんでおりますが、事務所業務としては想像以上にやることがいっぱいです。
事務所には常駐している弁護士は1人ですが、徐々に事務員を増やしつつ、事務所内を充実させていく予定です。
京都駅近くに開設いたしました弁護士法人心京都法律事務所を是非よろしくお願いいたします。
京都での弁護士業務にも少しずつ慣れてきましたが、弁護士会が変わると微妙にルールが異なることもあるため、まだまだ戸惑うことも多くあります。
弁護士は、各地域の弁護士会に所属しないと、業務を行うことができません。
京都弁護士会の会員としてしっかりと弁護士業務に取り組んでいきたいと思います。


2 今後も順次開設予定です 
弁護士法人心京都法律事務所は、弁護士法人心では初めて近畿地方にオープンした事務所です。
今後も少しずつ全国に弁護士法人心の事務所を新しく開設して、皆様が弁護士法人心に来所しやすい環境にしていく予定です。
駅に近く、皆様が相談しやすいような場所に、今後も事務所を増やしてまいります。
皆様が何か困ったことがございましたら、ぜひお早めにお近くの弁護士法人心に相談してください。

交通事故と自動車保険

今回は、交通事故の依頼者によく質問される保険の適用時点について、お話しします。

1 交通事故と保険契約

交通事故の被害者の方に適用されるのは,交通事故が発生した時点で効力が生じている保険です。
交通事故にあった後に新しい保険に入っても,遡って保険が適用されることは通常ありません。
弁護士費用特約を使用する場合にも、交通事故当時に効力が発生していた保険に弁護士費用特約が付帯しているかどうかを探す必要があります。
交通事故が起こってから自動車保険等に入ったり、特約をつけたりしても間に合わないのです。
今では弁護士費用特約に入っていたとしても、事故当時に入っていなければ弁護士費用特約は使えません。
自動車を運転される方は、きちんと検討して適切な保険に入りましょう。

2 交通事故後の保険会社の変更
交通事故にあった際に適用される保険は事故当時に入っていた保険ですので、事故後に別の保険会社の保険に変更しても、使用中の保険に影響がないことが通常です。
弁護士費用特約を使用して弁護士に依頼している途中で、自動車保険の更新の際に保険会社を変えたいとおっしゃる方もいます。
別の保険会社と新しく契約しても、事故当時に加入していた保険会社がそのまま弁護士費用を負担します。
事故後に保険会社を変更したり、保険をやめてしまったとしても問題ありません。
交通事故時の対応次第で保険会社を変更したり、保険内容を見直したりしてもよいのです。
万一再び事故にあった際に後悔しないように、更新の際にはきちんと保険を選んでください。

今年も1年ありがとうございました。

1 1年を振り返って
今年も1年が終わろうとしています。
名古屋も厳しい寒さが続いておりますが、皆様はお風邪など引いてはいないでしょうか。
今年は、新型コロナウイルス等で大変な1年になってしまいました。
年末に向けても新型コロナウイルス患者の増加で気が抜けない状況が続いています。
現在交通事故で通院されている方も、また不運にも年末年始に交通事故にあってしまうかたもいらっしゃるかと思います。
新型コロナウイルス患者の増加により、非常に通院しづらい状況は続いていますが、それでもやはり交通事故にあった際には通院が必要不可欠です。

2 通院継続の必要性
病院に行きづらい事情は保険会社も把握しています。
通院しないことについて説明すればある程度の配慮があった場合もありました。
しかし、それでもはり痛みがあれば通院するものと考えているため、通院の日数が少なければ治療費の支払いを打ち切ってきます。
病院への通院がしづらい場合には、病院を選んで転院をしたり、通院の頻度やタイミング、接骨院への通院を併用できないか等を医師に相談してみてください。
治療をしなければ症状は改善しません。
病院に行かなければ、我慢できる程度の軽い痛みしかない場合と区別できずに、治療は必要ないと思われてしまいます。
色々と工夫をして通院しやすい状況を作り出し、きちんと医師の指示に従って通院をしてください。

3 今年の最後に
今年も皆様には1年お世話になりました。
また、ブログを読んでいただきましてありがとうございます。
来年もよろしくお願いいたします。
それでは、よいお年をお迎えください。

休業損害として認められるもの、認められないもの

名古屋も寒さが段々と厳しくなってきました。
新型コロナウイルス感染も増加してきておりますので、皆様お身体ご自愛下さい。
今日は休業損害について注意しておいた方がよいことを説明いたします。


1 休業損害について気を付けること
事故によるケガやその治療のために休業する必要が生じて休業し、現実の収入減や有休休暇の使用があった場合には、休業が損害として認められます。
もし、事故にあわなかったとしても収入が得られなかったのであれば、そもそも損害がありませんし、休業の必要がなければ損害が発生しても賠償されません。
入院する必要があって入院していたり、医師の判断で就労不能と判断されて休業が指示されれば、休業の必要があることが分かりやすく、争いが起きにくくなります。
医師に休業の必要性について相談する場合には、仕事の内容を含めてきちんと休業の必要があるかを相談してください。
休業に関して医師に診断書等を書いてもらう場合には、主治医に仕事の内容を十分に理解してもらった上で、医学的見地から休業が必要な理由を丁寧に記載してもらってください。
また、症状が悪化してやむ得ず休業する方もいらっしゃいますが、そのような場合にはご自宅で安静にするだけでなく、身体のためにも病院にいってきちんと診察を受けてください。
通院のない日に休業しても、ケガが理由なのか他の私的な事情で休業したのかが分からず、休業損害として認められないことがあります。
また、会社を休まなくても通院できるのにあえて遅刻や早退をして休業損害を請求しても、休業の必要がないとして損害として認められません。
事故直後には休まなかったのに、理由もないのに事故から時間がたってから休業した場合にも、事故との因果関係がないものとして扱われることがあります。
実際に休業して現実に収入が減少してから休業損害を争われると、生活に支障が生じる場合もあります。
安易に判断せずに、きちんと医師や弁護士に相談しておいたほうが安心です。

2休業損害として認められないもの
会社がお休みの日やお仕事が終わってから通院しても、給料の減額がないので損害がないことから、休業損害は認められません。
通院のために残業ができずに収入が減ることはありますが、残業は常にあるものではなく、残業の有無や残業時間が証明できないため、現実的には請求が困難です。
また、ケガによる通院等の際に有休休暇ではなく、代休を使う方がいらっしゃいますが、一般的には代休を使用した場合には休業損害は請求できません。
代休を使用した場合には、会社がお休みの日に病院に行ったことになり、損害が発生しないからです。
また、有給休暇にも色々な休暇がありますが、就業規則の定め方によっては休業損害として認定できないものがあります。
自由な時期に取得できる有給休暇は、労働者の権利であり、経済的価値があるものです。
本来であれば別の目的で使用することも可能でしたし、有給休暇が買い取りをされることもあります。
自由に使用できる有給休暇は、交通事故で使用したことで経済的な価値が失われてしまったので、休業損害として認められるのです。
ところが、私傷病休暇や夏季休暇など、使用時期や使用理由など使途を限定している休暇を使用した場合には、通常は休業損害は認められません。
私傷病休暇などは、ケガや病気などの定められた理由が発生しなければそのまま消滅するものですし、買い取りもありません。
このような有給の休暇を事故によって使用しても、被害者に経済的な損害が発生しないので休業損害とは認められません。

交通事故で被害者が弁護士に相談や依頼をする理由とタイミング

1 被害者が弁護士に接触する理由やタイミング
交通事故の被害者の方が,弁護士への相談を迷って相談しないまま相手保険会社と示談してしまうことがあります。
では,弁護士に相談や依頼をされた方は,どのような理由やタイミングで相談,依頼をされるのでしょうか。
2 交通事故直後のご相談,ご依頼
交通事故にあった被害者の方には,事故にあった直後に,交通事故の知識や対応の仕方を知りたくてご相談をされる方がいらっしゃいます。
今後の流れや今後やるべきこと,やってはいけないことなどの注意点を知っておくためにご相談をされたり,過失割合が気になって相談されます。
この段階で少なくとも一度は相談をして,必要な知識を身に着けておくことが一番安全です。
また,事故直後に保険会社や加害者からの心ない言葉や対応を受けたことでご相談を受けることもあります。
保険会社の担当者と話すこと自体が強いストレスになるような被害者は,この時点で依頼をされることもあります。
弁護士に依頼すると窓口が弁護士に一本化されて,相手側は弁護士を通してしか被害者に連絡を取れなくなりますし,被害者も弁護士を通してしか相手側と接触できなくなります。
対応自体が強いストレスになる方は,弁護士に相談してすぐに依頼をされる方もいます。

3 治療費の打ち切りや症状固定
交通事故で治療を続けていると,相手保険会社からそろそろ治療を終了するよう言われたり,症状固定と言われるたりしたことがあります。
被害者の方は,治療を続けたかったり,症状固定後にどうすればいいかわからなかったりして,弁護士に相談をします。
主治医がまだ治療が必要と言っているにもかかわらず相手保険会社から治療費を払わないと言われることもありますし,主治医も症状固定と考えていて後遺障害の申請に進むべき場合もあります。
状況によって,弁護士から治療費の一括対応や後遺障害申請の仕組み説明や相手保険会社等に対する対応方法のアドバイスをします。
治療費を立て替えること自体は相手保険会社の義務ではないため,治療費の支払いを強制することができませんし,症状固定後の治療費を支払う義務は相手保険会社にはありません。
しかし,被害者が,時間の都合で相手保険会社と直接連絡が取れていなかったり,性格的に強く言えない場合などに,代わりに相手保険会社に理由を聞いたり,自分の言いたいことを主張して欲しくて,弁護士に依頼される場合もあります。
また,後遺障害認定の可能性が上がるように後遺障害申請を弁護士に依頼される場合もあります。

4 相手保険会社からの示談提案
被害者が,相手保険会社から示談金額の提案を受け,適正な金額が分からなかったり,交渉しても増額しないので弁護士に相談することもあります。
弁護士に相談すれば,適正な金額かどうか,弁護士に依頼するメリットがあるか等をご説明いたします。
メリット等を確認のうえでご依頼いただくか決めることができますので,相手保険会社から示談金の提示があった場合には,すぐに返事をせずに弁護士にご相談ください。

治療費と過剰診療

1 治療の必要性,相当性
 交通事故にあった被害者の方の多くは,相手の保険会社から治療費の支払いを受けます。
 治療費として請求された実費が,すべて治療費として認められるとは限りません。
 治療費として認められるのは,必要かつ相当な実費に限られます。
 医師の指示に従って通院していれば,通常,治療の必要性や相当性が問題となることはありません。
 しかし,通えば通うほど慰謝料が増えると勘違いするなどして,一日に何度も通院した場合や無理に通院回数を増やした場合など,通院自体が過剰診療となる場合があります。

2 過剰診療と判断された場合
 診療行為の医学的必要性ないし合理性がない過剰診療の費用は,治療費として認められません。
 たとえば,ケガが軽微だったり,治療の終盤で徐々に治っているはずなのに,毎日通院をするような場合には,過剰診療が疑われます。
 過剰診療の場合には,交通事故の治療費とは言えないので,治療費が自己負担になったり,一旦保険会社が支払った治療費も後に慰謝料などのもらえる賠償金から差し引かれます。
 治療費と認められるためには,医学的な見地から,治療によって症状の改善効果があり、また治療内容や通院頻度が適正であることが必要です。
 早く治そうとして1日に何度も病院に行ってもそれにより症状が改善するわけではありません。
 同じ日に何度も病院に行ったり,同じ日に病院と接骨院に通ったり,必要以上の治療をしても症状はそれに比例して改善するわけではありませんし,通院自体が被害者の不利になるだけです。
 また,保険会社と争いになって裁判をする場合には,治療費を請求する被害者がそれを証明しないといけなくなりますが,医師の協力が必要であったりして簡単なものではありません。
 保険会社の側も,治療費が高額になって保険会社の負担が増えることを嫌がることが多いため,むしろ早期の打ち切りにつながることもあります。
 通院の頻度については医師ともきちんと相談し,過剰診療と疑われないように適切な通院をしてください。

3 早めの相談をお勧めする理由
 交通事故の相談で,自賠責保険の説明の一部分の記載を勘違いして,日額が決まっているので毎日通えば慰謝料が増えると勘違いしている方の相談を受けることがあります。
 自賠責保険は,治療費や休業損害を含めたケガに関するすべての損害について120万円を上限に定められた金額を支払うことができる保険です。
 治療費は自由診療の場合には健康保険を使用するよりも高くなりますし,健康保険を使っても通常は健保組合から被害者が窓口で払った残りの割合の治療費の請求がされますので,被害者が考えているより高額になることが多いです。
 一度交通事故にあうと,損害は自賠責保険の上限を超えることが大半で,上限を超えた損害は自賠責保険からは支払われません。
 自賠責保険で損害賠償金額が足りないからこそ,自動車に乗る方は任意保険に入る必要があるのです。
 自賠責保険の上限の120万円を超えた部分の慰謝料は,日額で決まるものではありませんので,通院日数や通院期間に比例して定額の慰謝料がもらえるものではありません。
 裁判基準の慰謝料も通院日数に比例するものではなく,通院期間が長くなると慰謝料は増えますが通院期間が長くなるにつれて増額の幅は緩やかになっていきます。
 最近はインターネットで簡単に情報が手に入りますが,必ずしも正確でなかったり,分かりにくくて解釈を間違ったりすることもあります。
 交通事故にあったら,なるべく早く専門家である弁護士にきちんと質問,相談をして,正しい知識を身に着けてください。

主婦の休業損害

 会社員が交通事故で受傷して会社を休んだりしたことで給料が現実的に減少してしまった場合,休業にともなう収入の減少は,原則として休業損害として損害賠償を受けることができます。
 では,ケガをして家事ができなかった専業主婦などの家事従事者は,家事ができなきなかったことによる損害賠償をうけることができないのでしょうか。

1 家事従事者の休業損害の請求
 家事従事者とは,現に家族のために家事労働をしている方のことを言います。
 確かに,自分の家族のために家事をすること自体で家族からお金を払ってもらっている方はいません。
 しかし,家族は,家事従事者が家事をすることで長時間働いてお金を稼ぐことが可能になりますし,家事従事者も家事をしなければ働いて収入を得ることができます。
家族以外の者を雇うと一定の報酬を支払わなければなりませんし,家族関係があるために対価が支払われていないだけです。
 そこで,家事従事者が家事をできなかった期間については,休業損害を請求することができます。
2 家事従事者の休業損害の算定方法
  会社員などの給与所得者であれば収入の減少額は計算しやすいですが,家事従事者は実際には報酬をもらっていません。
  では,現金収入がない家事従事者の休業損害は,どのようにして算定されるのでしょうか。
 家事従事者の算定の基礎となる収入額は,女性労働者の平均賃金等を用います。平均賃金は,毎年厚生労働省が発表している統計である賃金センサスを基準としています。
 他の人が家事をしていたり,家事を分担している場合などには,認められなかったり割合に応じて減額されたりする場合もあります。
3 主婦の休業損害の請求の際
 相手保険会社は,主婦の休業損害について積極的に認定しない場合があります。
 保険会社から何も言われないままだった場合には,休業損害を0円で計算されていても,被害者が気づかずにそのまま示談してしまうことがあります。
 相手保険会社から示談金の提示があった場合には,他に何か請求できるものがないか,一度弁護士のチェックを受けてみてください。
 また,休業損害として認定されていても,非常に低額の認定の場合もあります。
 もちろん,ケガの部位や程度によって家事に生じる支障は様々ですので,金額を算定して保険会社と合意できるかは話し合いによります。
 裁判で決める場合には,本人の陳述書のほかに医師に対してどの程度家事に支障があったかの問い合わせ書類を作成して証拠とすることもあります。
 主婦の休業損害について請求される方は,ぜひ一度弁護士に相談して,増額の見込み等のチェックを受けてください。
 弁護士法人心では,無料で示談金のチェックをしておりますので,お気軽にお問い合わせください。。

後遺障害における加重傷害について

この度,弁護士法人心 千葉法律事務所が千葉駅の近くに新しくできました。
千葉の周辺の方は弁護士法人心にますますアクセスがしやすくなったかと思います。
交通事故等で何かお困りごとがございましたら,弁護士法人心にご相談ください。

それでは,本日は,後遺障害の加重障害についてお話します。

1 既存障害があるとき
交通事故にあう前にその部位にすでに既存障害があった方が,同一部位や同一系列の部位に再度交通事故で傷害を受けた場合には,どのように考えればよいのでしょうか。
後遺障害の考え方では,同一部位等に新たに障害が加わったとしても,交通事故前の障害等級よりも等級が重くなるのでなければ,あらたな後遺障害とは評価されません。
事故前のケガや病気で障害のある方が,既存の障害と同じ部位に同じ等級の後遺障害が認定されても,障害等級表上の障害の程度を加重したものといえず,後遺障害に該当しないとされるのです。
被害者の方としては,せっかく痛みをほとんど感じないようになっていたのにまた痛みが出てきたり,もともとあった痛みに加えて痺れまで発生するようになったなどの場合は,納得できないお気持ちは強いかと思います。
しかし,症状が悪化したり加わったりしたとしても,後遺障害等級が同じであれば,前に認定された等級の範囲内の障害として,後遺障害部分が傷害部分とは別に損害賠償の対象となることはないのです。
ケガをした部位に症状が残っていたとしてもある程度以上でないと後遺障害とは認定されないのと同じで,同じ等級内での症状と判断された場合には,事故前と比較した悪化の度合いが小さいと評価され,後遺障害にあたらないことになります。
例えば,何年も前に頸部のムチウチの痛みで後遺障害等級14級9号を認定された方が,再度事故にあわれて頸部のムチウチになって痛みがぶり返りたり,しびれが加わったり等しても,同じ14級9号の認定であれば,後遺障害としての賠償を受けることができないのです。
交通事故にあう前に,ケガをした部位に何らかの症状があったことがある場合には,後遺障害申請をする際に注意が必要です。

2 加重障害の発生

では,事故前から障害が残存していたところに交通事故によって新たに障害が加わった結果,現存する後遺障害が既存の障害の程度よりも重くなったと認定された場合には,どのように考えるのでしょうか。
すでに後遺障害がある方が傷害を受けたのちに同一部位で前回より加重された重い等級が認定された場合には,加重された後遺障害等級の賠償金から既にあった後遺障害等級分の賠償金を差し引いた金額の賠償を受けることになります。
交通事故で発生した損害は,等級が過重となって悪化した部分のみですので,既存障害の部分はその交通事故とは関係のない損害になります。
そこで,加重された後遺障害に該当する賠償金の金額から,もともとの等級に相当する賠償金の金額が控除されることになるのです。
加重障害の方の後遺障害申請や損害賠償請求には,慎重な判断や複雑な計算が必要になることが多いですので,お早めに弁護士にご相談ください。
また,ご相談の際には,事故で症状が出た部位等に事故前に症状が出たことがあったかや過去に交通事故にあったことがあるかなど,古い話でもきちんと思い出したうえでご相談ください。

自賠責保険による賠償について

 少しずつ夏が近づいてきましたが,皆様お元気でしょうか。
 体調にお気をつけてお身体をご自愛ください。

 この度,弁護士法人心は,四日市市に事務所を開設いたしました。
 三重県内では、3か所目、全国では11か所目の事務所となります。
 四日市市の近郊にお住まいの方は,弁護士法人心四日市法律事務所でのご相談もご検討ください。

 では,本日は,自賠責保険について,少しお話したいと思います。

1 自賠責保険とは
  自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は,原動機付自転車(原付)を含むすべての自動車に加入が法律上義務付けられている保険です。
  自賠責保険は,交通事故による被害者を救済を目的としており、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることにより、最低限の対人賠償を確保しています。
  そこで,物損については,自賠責保険からの賠償はありません。
  車の修理代を自賠責保険に請求したいという方がいらっしゃいますが,制度上請求することはできませんので,相手が任意保険に入っていなければ本人に請求するか自分の車両保険を使うしかありません。

2 重大な過失による減額
  自動車事故でケガをした方の過失が10割の場合には自賠責保険からの賠償もありませんが,10割未満の場合には加害者であっても何らかの自賠責保険金の支払いを受けることができます。
  傷害部分の損害について,過失割合が7割以上10割未満の場合には,自賠責保険の範囲内であっても原則として賠償金は2割の減額がされます。
  ただ,損害額が20万円未満の場合には,減額はありませんし,減額により20万円以下となる場合には20万円が賠償されます。
  傷害部分の損害について,過失割合が7割未満の場合には,自賠責保険の範囲内であれば賠償金の減額はありません。
  後遺障害や死亡に係る損害についても,7割以上過失がある場合には,過失の割合に応じて減額がされます。
  傷害部分よりも過失による減額の割合が大きいため,大きなケガをした場合には加害者であっても過失は重要です。
  また,自賠責保険は重大な過失がなければ過失が考慮されないため,過失が考慮される裁判基準よりも自賠責保険の保険金額のほうが高くなる場合もあります。
  示談金の金額について気になった方は弁護士に相談したほうがよいでしょう。

3 自賠責保険からの傷害部分の賠償金 
  自賠責保険の保険金額は,原則として120万円を限度としています。
  治療関係費,文書料等や休業損害,慰謝料をすべて合わせて120万円を限度に自賠責保険から支払いを受けることができます。
  賠償金額が120万円を超えることはよくあることですので,自動車を運転される方は任意保険には必ず加入してください。
  自賠責保険の慰謝料は通院1日につき4200円でしたが,令和2年4月1日以降に発生した事故からは1日につき4300円になり,休業損害や看護料等のいくつかの項目についても,改正がありました。
  自賠責保険の慰謝料の計算方法を見て勘違いする方もいらっしゃいますが,自賠責保険の慰謝料は通院期間と実通院日数の2倍の「いずれか少ないほう」を基準に計算します。
  そこで,ケガをされた方が毎日病院に通っても通院期間以上の金額をもらうことはできません。
  2日に1回以上通っても,通院期間のほうが少なくなりますので,通院期間での計算になりますから,自賠責保険の慰謝料計算上の金額は同じです。
  また,全体として自賠責保険の120万円の上限を超えた場合には,自賠責保険からはそれ以上の支払いはありません。
  仮に加害者が任意保険に入っていても,自賠責保険の上限を超えた場合には,自賠責保険の計算方法とは違う計算方法で慰謝料を計算しますので,日割りで計算すると日額4300円を下回ることになることもよくあります。
  ただし,裁判基準でも,治療期間が長引けば慰謝料の増額幅が小さくなりますので,比例して慰謝料が増えるわけではありません。
  過剰診療と疑われることがないように,医師と相談しながら,必要な期間,必要な頻度で治療を行ってください。

    
  

むちうちでの後遺障害

 緊張が続いていた名古屋も少し落ち着いてきました。
 皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 今日は,よく相談を受けるむちうちの後遺障害についてお話します。

1 自動車事故によるむちうち
 交通事故にあった際に,追突や急停車等の衝撃で,頸部が急激に過伸展,過屈曲の状態になることで頸部に損傷が起こった時,首が鞭のようにしなって振れることにより,頸部痛,痺れ,頭痛,首や肩の筋肉の硬直,めまい等の症状が発生することがあります。
 傷病名としては,「頚椎捻挫」「頸部挫傷」「外傷性頚部症候群」等の様々な呼ばれ方をすることがありますが,これがいわゆるむちうちと呼ばれるものです。
 むちうちでは,様々な自覚症状が発生しますが,レントゲンやMRI等の検査に結果が表れるような他覚所見に乏しく,保険会社が早期に治療費の負担を打ち切ることがよくあります。
 しかし,事故の衝撃が大きかったり,衝撃を受けた際の態勢が悪かったりすると,長期的にむちうちの症状が続くこともあります。
 むちうちでは,骨に異常があったり,神経学的検査に反応がないような場合でも,長期的に症状が続くことがあるのです。
 他覚所見に乏しい場合には,医師から,むちうちだけでは後遺障害が取れないと言われることがありますが,そんなことはありません。
 むちうちでも,事故当初から一貫して症状が続いており,適切な治療を受けても強い症状が症状固定時になお残存していて,症状が長期的に継続することが予想されるような場合には,後遺障害が認定されることがあります。

2 むちうちで考えられる後遺障害等級
 むちうちの後遺障害等級としては,14級9号「局部に神経症状を残すもの」,12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する可能性があります。
 後遺障害が認定されれば,賠償金として,後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益が支払われることになりますので,症状固定後に自己負担となった治療費を支払っていくうえでも,後遺障害等級の認定を受けることはとても大切です。
 強い症状が残っているのに,むちうちでは後遺障害認定されないと思い込んで申請すらしないと,痛みがあっても病院に通うことができずに大変なことになってしまうことがあります。
 むちうちでであっても後遺障害等級認定を受けられる場合がありますので,お身体に症状が残っているような場合には,一度弁護士にご相談ください。

3 交通事故にあったときには早めに弁護士に相談してください
 交通事故にあった場合には,病院の医師は,ケガを治す専門家で症状が残らないように一生懸命治療をしてくれます。
 しかし,治療後に書状が残った場合に後遺障害申請をすることを考えて準備をしてはくれません。医師は,万一後遺障害が残った場合に証拠となるように考えて検査等をしてくれるわけではありません。
 交通事故にあった場合には,弁護士に相談して,別の視点からのアドバイスを受けていただき,万一の際に備えてください。
 弁護士法人心では,交通事故にあわれた際には無料でご相談を受けておりますので,なるべく早く一度ご相談いただければと思います。

物損事故から人身事故への切り替え

1 事故直後にはケガの自覚がないことも
交通事故のあった直後は痛みがなく,当初は物損事故として取り扱った場合にも,後にケガの症状が出てきた場合には,人身事故に切り替えることができます。
交通事故によりケガをしていても,事故直後は興奮していたり緊張をしているため,痛みを感じないことがあります。
事故直後には気が付かなくても,ケガをしていれば時間がたって落ち着くにつれて痛みを自覚し,ようやくケガをしていたことに気が付いて慌てて病院に行くことになります。
そこで,一旦物損事故として警察が処理していたとしても,交通事故とケガの間に因果関係が認められれば,後から警察に人身事故としての扱いに切り替えてもうこともあるのです。
警察への人身事故届出に期限があるわけではありませんが,時間がたってしまうと因果関係がはっきりしなくなったり,人身事故としての捜査等が難しくなってしまうため,なるべく早く届出る必要があります。
警察への届出を放置せずに,なるべく早く,少なくとも担当警察官に人身届出をしたい旨の連絡をしていただくことが大切です。


2 届出の場所
人身事故の届出は,事故が起きた場所を管轄する警察署に届出をします。
交通事故が起きた時には担当した警察官から担当警察官の名前と連絡先が書いた紙を渡されることが多いですので,大切に保管しておいてください。
担当した警察官が事故の状況等を把握しているため,担当警察官が在籍している警察署で担当警察官と話をする必要があります。
ただ,急に警察署を訪問しても,事故現場を担当する警察官は不在のことや別件の対応中なこともありますので,あらかじめ電話等で連絡をして事前の日程調整をし,必要な書類等を確認してから訪問したほうがよいでしょう。
診断書や印鑑等,届出のために必要なものをしっかり確認してから行くとスムーズに届出ができます。


3 診断書の発行
人身届出をするためには,ケガをしたことを明らかにする必要があるため,ケガを診察した病院の医師が発行した診断書を持参する必要があります。
交通事故の痛みが出てきたら,できるだけ速やかに病院に行き,交通事故にあってケガをしたことを医師に説明して診察や検査をしてもらい,警察に提出するための診断書がほしい旨を申し出て診断書を発行してもらいます。
診断書には名前や生年月日,少なくとも必要になる治療期間などが記載されています。
名前や生年月日などに間違いがあった場合には再度訂正してもらうために病院に行く必要が出てくるため,間違いがないか確認しておくと安心です。


4 人身事故への切り替えの必要
人身届出により,人身事故に切り替えると,実況見分調書が作られたり,事故状況の話を聞かれて供述調書が作られたりして,刑事手続のための捜査がされます。
交通事故の状況に争いが出てきそうな場合には,警察にきちんと捜査をしてもらって事故状況等を記録してもらう必要があるため,当事者や目撃者の記憶が鮮明なうちに捜査をしてもらう必要があります。
この点からも,人身事故に切り替えるのであれば,なるべく早い方がよいでしょう。
警察への届出が物損事故のままでも,保険会社が人身事故として取り扱うこともありますので,必ず切り替えないといけない訳ではありませんが,争いになりそうな場合には届出をしておく必要があります。
人身届出をするべきか等,何か迷うことがあった場合には,弁護士に相談することをお勧めします。
迷っているうちに時間がたってしまわないようにお早めにご相談ください。

通院をしないことのリスク

1 昨今の状況
 名古屋でも新型コロナウイルスの感染拡大が続いております。皆様お身体に気を付けてください。
 また,公共交通機関の利用を避けるために,やむなく不慣れな自動車を運転される方も増えているかと思います。
 交通事故に気を付けて安全運転をお願いいたします。

2 通院しないことのリスク
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,総合病院への通院に対して消極的に考えている方が増えています。
 弁護士に対しても,交通事故後の通院についてのご相談がありました。
 もちろん,このような状況ですので,ご心配な気持ちはわかります。
 しかし,整形外科等の病院に通院しないと,治療をしないことで当然症状が悪化してしまいます。
 悪化したことについては自己責任と捉えられる恐れもありますし,通院日数が少なかったり間隔があいたことで保険会社から治療費の負担を打ち切られる可能性があります。
 また,通院日数が減少すると,慰謝料等の金額が減ることもあります。
 通院を躊躇するお気持ちも分かりますが,やはり通院しないことにはリスクが伴います。
 通院については,ご自身で判断せずに病院の先生や保険会社の担当ときちんと相談してください。
 また,必要に応じて総合病院から整形外科専門の病院に転院をしたり,病院への通院を減らして接骨院などを併用することも考えられます。
 できる範囲できちんと治療を継続することが大切です。

3 今後への備え
 今後,状況が悪化すれば,新型コロナウイルスの影響で外来診療を停止したり,病院を閉鎖することも考えられます。
 ご心配な方は,余裕があるときに,万一病院へ通えなくなった場合にどうすればよいのかあらかじめ担当の医師に相談しておくことも考えられます。
 もちろん,新型コロナウイルスによる影響ですので,保険会社も配慮してくれる可能性はありますが,最終的にどのような対応をしてもらえるのかは分かりません。
 今後,どのようになるかは未知数ですので,なるべく安全かつきちんと最後まで治療ができるように備えていくことが必要です。
 弁護士はもちろん,主治医の先生や保険会社の担当など,一つ一つ確かめながら,きちんとした治療を継続してください。

交通事故の治療中に交通事故にあった場合

1 被害者からの申告の必要
交通事故で治療中の方が別の機会に交通事故にあった場合,被害者は,2つの交通事故のことについて各保険会社の担当者に話すことが多いです。
双方の交通事故の担当者に別の交通事故のことを話せば,保険会社同士が話し合って,治療費等の対応について,どのように対応するかを決めます。
保険会社がそれぞれ別個に対応する場合もありますし,後から発生した交通事故の保険会社が前の事故の治療についても引き継いで,2回目の交通事故の保険会社だけで対応する場合もあります。
また,2回目の交通事故はケガをする程ではないと判断して,最初の保険会社だけが対応する場合もあります。
どのような対応になるのはケースバイケースです。
ただ,被害者が交通事故について申告をせず,2つの事故の担当者が,自分が対応している交通事故とは関係のない交通事故の情報を知ることができない場合があります。
保険会社が2つの交通事故があったことを知らないと,大きな問題が発生することがあります。

2 過剰な治療となる場合
交通事故の治療中に再度交通事故にあっても,ケガをした場所が全く異なるのであれば問題ありません。
例えば,交通事故で手をケガした方が,再び交通事故にあって足だけをけがした場合,被害者の方が,全く別々の病院で各部位を治療して各保険会社にそれぞれ治療費を支払ってもらっても,お互いに関係がないので問題ありません。
しかし,2回目の交通事故により1回目の交通事故の負傷部位が悪化したような場合には,問題になる場合があります。

3 ある被害者の間違い
被害者の方で,別々の機会の交通事故なので,同じ病院に行くと治療費や通院交通費,慰謝料等が混ざってどちらに請求するべきか分からなくなってしまうと思い,わざわざ別の病院に通った方がいらっしゃいました。
最初の交通事故で通っていた病院では,悪化した症状に対して診察のうえで必要な通院回数を指示し,投薬やリハビリなどの治療をし,治療費を保険会社に請求しました。
新しく通い始めた病院の医師は,他の病院で同じ負傷部位を含めて治療していることを知りませんので,患者の診察をして,通院回数を指示し,症状があるすべての部位について投薬やリハビリなどの治療をし,治療費を保険会社に請求しました。
後に,同じ負傷部位を2か所の治療機関で別々に治療していることが判明し,被害者が受けた治療は過剰な治療であると判断されました。
同じ負傷部位に2倍の治療したからといって,2倍早く改善したりするわけではなく,必要のない治療がされていると判断されたからです。
医師は,診察をして必要な治療やリハビリをしますが,お互いが治療をしていることを知らないと2重に治療をすることになり,過剰な治療になります。
過剰診療になると,必要のない治療が行われているとして,治療費はもちろん支払われません。
また,保険会社は,被害者が別々の交通事故のことを隠して過剰に病院に通って治療をしたと考えて詐欺を疑い,被害者は保険会社から一切の賠償金の支払いを拒絶され,支払い済みの治療費の返金を求められることになりました。
過剰ではなかった分の治療費について請求しようとしても,お互いを知らない医師は,どれくらい余分にした治療か分かりませんので,必要な治療の治療費を証明できなくなり,治療費の請求も困難になってしまっています。
被害者に悪気がなくても,医師や保険会社に何も知らせず別々の病院に通ったことで,大きな不利益を受けることになりました。

4 交通事故の治療中に交通事故にあった場合には
では,交通事故の治療中に再び交通事故にあったとき,被害者はどうすればよいのでしょうか。
まずは交通事故の治療をしている病院へ行き,再度交通事故にあったことを医師に伝えて,症状等が悪化していないかどうかを診察してもらってください。
少し時間がたってから症状が出る場合もありますので,安易に自分で判断せず,2回目の交通事故にあう前の身体の状態を知っている医師の診察を受けて,身体の状態を確認してもらってください。
そして,治療中の交通事故の保険会社には,別の交通事故にあってケガをしたことを伝え,2回目の交通事故の保険会社には,交通事故の治療中の事故であることを伝えてください。
医師の判断,保険会社同士の話し合いで,どの保険会社がどのように対応するのかが決まることが多いです。
このように,交通事故の治療中に交通事故にあったような場合には,様々な点で慎重な対応が必要となります。
弁護士に相談のうえで,適切に対応することをお勧めいたします。

任意保険に入る必要性

年末年始では,交通事故も増加しており,弁護士法人心へのご相談もかなりありました。
今回は,自動車を運転する際に加入している自賠責保険と任意保険についてのお話です。

1 自賠責保険
自賠責保険は,正式には自動車賠償責任保険といい,すべての自動車の所有者に加入が義務付けられている強制保険です。
自賠責保険に入っていない車で一般道を運転することはでず,自動車賠償責任保険証明書を携帯して運転しなければ,処罰の対象になっています。
車検の期間を超える自賠責保険に入っていないと車検を受けられませんので,車検切れの車に乗ったりしなければ,通常は自賠責保険には入っているものと思います。
車検切れの車に乗っていて事故を起こした場合には,加害者が被害者に発生した損害を自分で賠償しなければなりません。
また,自賠責保険は,加害者の過失割合によっては,加害者でも相手の自賠責保険を使ってケガの補償を受けることができます。
車検切れの車を運転することがないように,自動車の所有者はきちんと管理する必要があります。

2 自賠責保険の限界
自賠責保険は,車検切れをおこしていなければ全員が入っているはずの保険ですが,補償の範囲や金額は決められています。
自賠責保険はケガをした被害者への最低限の補償ですので,物損については補償されません。
また,自賠責保険は,最低限の保険ですので,交通事故が発生した場合,通常は自賠責保険で補償される金額を上回る損害が発生してしまいます。
例えば,ケガの部分の自賠責保険での補償は,治療費,休業損害,慰謝料,文書料等のすべてを含めて上限が120万円までです。
きちんとケガの治療をしようとすると自賠責保険では補償が足りないことが多く,上回った損害については,加害者が過失に応じて自分自身で補償しなければなりません。
また,後遺障害が残るような重症なケガを負わせたり,被害者が亡くなった場合には,数億円の賠償が必要となる場合もあり,高額な賠償金が必要になります。
1回の事故で複数の被害者が出る場合もあるため,1人1人では自賠責保険から上回った損害が少なくても,合わさると大きな金額になる場合もあります。

3 任意保険の必要性
最近,任意保険に入っていない方もかなりいらっしゃるように感じています。
車の車種によっては,修理代等が高額になる場合もあります。
個人で高額な賠償金を支払うことは,通常は非常に難しいため,これをカバーするためには任意保険に入る必要があります。
任意保険は,自賠責保険では補償できなかった被害者の損害を賠償してくれる上乗せ保険ですので,自動車等を運転する方は,きちんと自動車保険に入っていただきたいです。
また,保険に入っていない加害者との事故に備えた保険もありますので,加入を検討してもよいかもしれません。
交通事故の被害者からすると,相手が保険に入っていないと,事故にあわされた上にきちんとした賠償もしてもらえないことになります。
弁護士の立場からしても,加害者本人から適切な賠償を受けられることは現実的になかなか難しいことになります。
自動車を運転される方には,しっかりとした保険に加入していただきたいと思います。
また,交通事故の相手は選べませんので,ご自身の保険の契約や更新の際には,弁護士費用特約などの被害者となった場合にも安心できる補償をつけることも検討されてはいかがでしょうか。

1年の終わりに

1 ご挨拶
いよいよ令和元年が終わろうとしています。
そして,新しい年が近づいてきました。
名古屋も急に寒くなってきましたが,皆様いかがお過ごしでしょうか。

今年も慌しい1年となりましたが,なんとか無事に過ごすことができました。
依頼者の方を含めて色々な方に支えられてなんとか過ごせたのだと思います。
今年1年を振り返りながら感謝の気持ちでいっぱいです。

2 年末年始もお気をつけください

年末年始は事故が多発いたしますので,皆様も交通事故にあわないようお気をつけください。
しかし,本人が気をつけていても,相手の過失で事故にあわれる方もいらっしゃいるかと思います。
年末年始に交通事故にあわれたり,現在交通事故で通院中の方は,是非注意していただきたいことがあります。

年末年始は,お盆やゴールデンウイークと同様に,長いお休みの病院が多く,通院を先延ばしにされる方がいらっしゃいます。
しかし,交通事故で適切な賠償を受けるためには,事故直後に初診を受けることと,その後もコンスタントに必要な通院を続けることが必要です。
年末年始だからといって,通院を先延ばしにされないよう,是非お気をつけください。
また,通院中の方には,病院や接骨院ときちんと打合せて治療日の計画をされることをお勧めしております。
年末年始の忙しさで通院の間隔が長くなりすぎないようご注意ください。

3 最後に
それでは,皆様お体に気をつけて年末年始をお過ごしください。
本年は本当にありがとうございました。

相手の保険会社に対する被害者の対応の仕方

1 親切な担当者との付き合い方

交通事故にあってけがをすると,通常,被害者には加害者の加入する保険会社から連絡がきます。
加害者の加入していた保険会社は,被害者が行く予定の病院等に連絡をして窓口負担が発生しないように手配をしたり,毎月連絡をしてけがの状態を確認したりします。
保険会社の担当者には,もちろん親切そうな担当者もいます。
しかし,保険会社の担当者は,本当の意味で被害者の味方になってくれるのでしょうか。
加害者の保険会社は,加害者の代わりに対応しているのですから,仮に被害者に同情しているように見えても,加害者側の人間です。
また,被害者に賠償するのは保険会社ですので,必要な治療とはいえ治療期間が長くなるほど,保険会社の出費は増えることになります。
被害者の中には,事故直後で混乱していいたり症状も重くてつらい時期に自分のために事故対応したり,毎月心配してけがの状況を聞いてくれた親切な担当者だと思って,保険会社の担当者を困らせないようにと考えるかたもいらっしゃいます。
しかし,保険会社が毎月連絡をくれるのは,治療の終了時期を探るためであって,心配して連絡をしてくるわけではありません。
親切な対応は,保険会社が被害者と円満に示談するための手段でもあります。
そこで,被害者は,保険会社からの治療費の支払いや示談金の金額について,保険会社の担当者の「これが精一杯です。」という言葉を鵜呑みにせず,要求すべきことはきちんと要求する必要があります。
保険会社の担当者から「これ以上治療費を支払うことができないので後は自己負担で通って欲しい。その分慰謝料で頑張りますので。」とお願いされたり,示談金について「この金額が精一杯です。頑張りました。」と示談を促された場合には,本当に適切な対応なのかを一度弁護士にご相談ください。
弁護士法人心の弁護士が,交通事故の専門家の視点から本当に適切な対応であるかを検討させていただきます。

2 対応の悪い担当者との付き合い方

加害者側の保険会社の担当者には,何の落ち度もない被害者に対して,まだ治療が始まってもいないのに「そんなに長くは治療費を払えませんよ。」と言ったり,早く治そうと一生懸命治療をしているのに「そんなに通う必要があるんですか。」などと言う担当者もいます。
被害者は,けがによる痛みやストレスで大変な状態なのに,思いやりのない言葉をかけられるとつい感情的になってしまいます。
しかし,保険会社の担当者を怒鳴ったり,書類の返送や担当者の連絡を無視したりすると,治療費の支払いを止められたり,保険会社が被害者のかわりにする予定だった書類の取り寄せを自分でやる必要が出てきたりして,余計に手間がかかることもあります。
保険会社の担当者の態度がどんなものであれ,被害者は冷静に対応し,必要な書類は返送し,主張すべきことは論理立てて主張する必要があります。
被害者は,大変な状態の中でも,保険会社の対応には十分な説明を求め,口頭で話が出来ない場合には,文書やメールでの対応を希望するなど,被害者も対応を工夫し対処しなければなりません。
ただ,保険会社の担当者と話をするだけでストレスだという方もいらっしゃいます。
このような場合に弁護士に依頼すると,弁護士が窓口になって保険会社の担当と交渉等をしますので,被害者が直接担当者に対応をする必要がなくなります。
また,被害者がきちんとした対応をしていても保険会社の担当がきちんと対応しない場合もあります。
相手側保険会社の担当者の態度に困った被害者の方は,一度,専門家である弁護士に相談してみてください。

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